どんな食事を与えるか?

 「健康で長生きをしてほしい」そう願う飼い主様の気持ちは共通です。しかし、「食」に対する意識はどうやら対極しているようです。一つは「食べてくれて健康でいてくれればよい」と考えるパターンで、もう一方は「よりよい食べ物は何か」を常に探し続けているパターンです。

 前者のタイプの飼い主様は一般的に「ペットフード」を選ぶことが多いようです。しかし、ペットフード選択の基準は、評判や嗜好性などが優先するようで実際ラベルを読むことはなく、自分のコに一日に必要なエネルギー量は分かっていません。その場合、共通して生じる一つの問題が「肥満」です。ペットフード、特に良質なドライフードは思いのほかエネルギー量が高いのです。たとえば、体重50kgの女性が一日に必要なエネルギー量を約1600kcalとした場合、5kgでは160kcalという単純計算になります。一方で体重5kgの成犬では一日当たり約400kcalとします。ここで想像してみてください。あなたは現在食べている食事の量の約2.5倍もの量を食べることができますか?さらに、ドライフードをラベル表示に従って与えるとき少ないと感じたことはありませんか?つまり、ドライフードというのはものすごくエネルギーが凝縮されて作られているので、ほんのなん粒、あるいは何グラムからの差が積もりに積もると、もう一匹小型犬を飼っているくらいのエネルギー量を与えていたりします。もうひとつ、このパターンの飼い主様は「良く食べてくれる」ことが「健康」と直結するため、殆どの場合「肉」あるいは「肉の缶詰」を混ぜます。しかし、その量は適当なので、実際タンパク質過剰になっていることが多いのです。

 別に健康ならいいじゃないかとそれでも余り気にしないことが殆どですが、タンパク質の過剰は結果腎臓や肝臓に負担をかけることになります。困ったことに腎臓も肝臓も大変我慢強い臓器なので、なんらかの症状が現れて飼い主様が気ついたときには、かなり進行していたりするものです。ですから、与えているフードの栄養成分の特徴とエネルギー量、混合食品の特徴とエネルギー量、愛犬に必要な量とエネルギーを把握しておく必要があるのです。

 また、「よりよい食べ物を探す」タイプの飼い主様が栄養に興味があるのは大変すばらしく、また喜ばしいことです。しかし、一般的に表面的な情報のみを集めるため、一件よいことをしているようで実は間違った食事を与え、何らかのトラブルが生じていることが多いのです。特に、最近ではこういった飼い主様は「手作り食」に行き着くのですが、「質の高い食材で作った食事ならば健康に良いはず」的な考え方が多く、色々な情報の中から自分なりに理解した部分を組み合わせて食事を作ります。こういった場合、よくあるのは肉が非常に多いパターンと野菜が非常に多いパターンです。いずれの場合も栄養バランスが崩れる原因となります。特に生肉と野菜だけの組み合わせの場合、リンの含有率が非常に高くなるため、カルシウムとのバランスが悪くなり、結果ストルバイトなどを生じることもあります。

 「食事」を決定する要因は栄養だけではありません。環境的要素、性格的要素、運道量や体質に適した食材など多様な要素が関連します。気づき、考え、実践することは愛犬の健康を考える上で非常に重要なことですが、みずからの思い込みで間違った選択をし、その結果思わしくない状態に導かないようにしたいものですね。

一覧ページへ戻る