ペットの権利

 今年最後のコラムになりました。本当に年々1年が短くなっている気がします。特に今年は大震災があり、心穏やかではいられなかったせいか気が付けば12月になっていました。一方でこの大災害を通じて気づかされたことも多くありました。みなさんの気づきはどのようなことだったでしょうか?私は、改めて「食と体や心の結びつき」を再確認しました。「空腹な時にそれを満たす食べ物を、寒い時に身体を温める食べものを、熱い時には身体の余分な熱をとる食べ物を、体調が悪い時にそれを癒す食べ物を、さらには落ち込んだ時に元気になれるような食べ物を」食べることは、まるで魔法でもかけられたかのように私たちの体と心を元気にしてくれます。被災者の方々が暖かい食べ物を口にした時の心からの笑顔がとても印象に残っています。

 食べることはあまりにも必然かつあたりまえであり、日常生活では何となく食べていてもある程度の健康が維持できているせいか、その大切さに九頓着であることにもうなずけます。しかし、このある程度の健康が維持できているのは私たちが無意識のうちに「体が要求する食べ物」を選び、食べているからです。甘いものが食べたい、さっぱりしたものが食べたい、がっつりしたものが食べたいなどなど…これらは身体が自己調整をするために必要な栄養素を体内に取り込めという脳からの指令なのです。ところが、この指令を無視し続けると、本来の調整機能が正常に働かなくなるため、必要以上の量を摂取する、偏った食べ物だけを食べるといったことが生じ、健康を損なう結果となります。

 このことは動物も同じです。動物は本来自己調整能力に従順であるため、動物自体が食べ物を選ぶことの出来る環境であれば、体調に応じて薬草を食べる、吐き戻す、下痢をする、食べないなど様々な方法で体調コントロールをするでしょう。ところが、ヒトと暮らし人が与えるものを食べ、自らの選択肢がない生活環境では、ペットは飼い主様が気付かない限り体調に応じた食事を食べることはできません。少々体調不良でもそれしか食べ物の選択肢がなければ空腹を満たすために食べてしまいます。飼い主様は食べると安心をする傾向があるため、翌日も同じ食事を同じ量だけ与えます。これが続けば、脳からの指令を無視し続けた食事です。体調の変化は早期に気付けば早期に回復しますが、長引けばそれだけ時間もかかります。食べることは本来「楽しい記憶」と結びつくことが大切ですが、嘔吐などを繰り返せば「食べること=嫌なこと」と結びついてしまいます。その記憶がトラウマになる前に、飼い主様はその変化に気づき、体調に応じた食事を与えることが回復の近道に非常に重要です。

 そのためには、日頃からペットの行動パターンや変化をよく観察すると同時に、その動物に必要な栄養やそれを含む食べ物、基本的な体の働きなどについて興味を持ち知ることです。こういった知識を得ることを「面倒くさい」と感じる人も多いのは事実ですが、「命」を預かった以上、彼らの身体が発している赤信号に敏感になり、「快眠、快食、快便」を促す食生活と運動、そして何よりも愛情を与えることはあなたと家族になったペットが主張できる最低限の権利です。笑顔の絶えない幸せなペットが来年も増えますように!

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