気になる犬のにおいと食事の関係

 「うちの子くさいから今日はシャンプーに出したの」とおっしゃる飼主さんをよく耳にします。ヒトは自分にとっていやなにおいは「消臭」しようと考え、犬はその臭いを「収集」しようとします。それは、イヌにとって「におい」は生活に必要な情報収集手段ですが、視覚による情報収集が主なヒトにとっては単なる嗜好程度の感覚しかないからでしょう。今回はその、「ヒトが感じる犬のにおい」について、さらに食とのかかわりについて考ましょう。
 そもそも「嗅覚」は、「人間や動物の生命維持、種族保存に欠かすことの出来ない」重要な感覚です。ですから、生きていく上で「におい」は様々な情報提供者であると考え、「くさい」からといってすべて消臭するよりも、まずなぜ「くさい」のか、その「原因」を考えてみることで思わぬ病気から身を守ることにもなります。
 それには自分のイヌの「普通のにおい」を知っていることが重要です。なぜならば、くさいにおいは動物性蛋白質や脂肪などイヌの主食となる食べ物が代謝した結果生じるので、イヌがもともとヒトより強いにおいがするのは当然なのです。さらに、縄張り行動があるため肛門腺から分泌される「自分のにおい」も個体独特のにおいということになります。
口臭や耳のにおいも覚えておきましょう。健康状態における「普通のにおい」を把握できたら、次はくさいと感じたときの判断です。それがいつもより多少強い程度ならば、それは飼主のイヌに対する手入れ、または環境の手入れ不足、あるいはいつもと違うものを食べたなどの栄養バランスの変化などから来ることが多いようです。嫌なにおいの元は細菌感染と関連するので、定期的なシャンプー、歯磨き、ブラッシング、耳掃除や散歩後の手足や生殖器周りの洗浄などきちんと手入れをして細菌の増殖を防ぐように心がけましょう。また、環境面では室内の換気、掃除、湿度の管理などが大切です。それでもにおいが気になる場合は、ラベンダーなど優しいにおいのするハーブを少なめに炊くことで、部屋の消毒殺菌効果も得られ、かつストレス軽減にも役立ちます。
 では、いつもとは違うにおい、異常なにおいだと感じた場合はどうでしょう。この場合はまず、病気を疑い出来るだけ早く動物病院へ連れて行くのが望ましいでしょう。においが関連する病気には、口腔疾患、伝染病、胃腸障害、腎臓障害、肝臓障害のほか、外耳炎、湿疹、外部寄生虫、脂漏症、肛門嚢炎、子宮蓄膿症、膀胱炎など治療が必要な様々な病気が隠されているからです。
 この場合も、食事内容、給餌方法やおやつの種類など食生活と環境ストレスの見直しと改善が関わってきます。栄養バランスが崩れ、そこに環境的ストレスが加わることで消化機能が低下し消化管へ負荷がかかる結果、免疫力が低下するからです。この状態では病気を導いているばかりでなく、治療後の回復も遅れてしまいます。
 食生活を見なおすポイントは、ペットフードならばフードを構成する蛋白質源の生物価、1日に必要なエネルギー量や給餌量を。手作り食の場合は、6大栄養素のバランス、嗜好性、エネルギー量や個体の必要条件を満たしているかなどです。また、おやつの種類や量、あげる時間などが主食と連動しているかも大切です。そして何より排尿、排便、被毛の状態、目やにや鼻のつや、目の輝きや元気さなども「におい」とともに食事に関連し、かつ健康情報を提供してくれています。

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