「手作り食」とは?

 ここ何年かで「犬の手作り食」に関する興味が広がりつつあります。私ガ研究し始めたころは、手作り食を考える飼い主様はほんのごく一部、氷山の一角にもほど遠いほどでした。しかし、愛犬との生活パターンの変化に伴い、手作り食に関する本も多数発行されて情報が入手しやすくなったせいか「手作り食派」が増えているようです。
 私にとっての手作り食とは「体調を整え、健康を維持できる、あるいは病気やその回復をサポートできる」食事のことです。つまり、一般的には「食べること=生きること」ですが、私は「食べること=健康に生きること」を理想としています。
 手作り食は、ぺットフードと違い毎回が完璧な栄養バランスにはなりません。その代わりに「何を、どれだけ、どのように」食べさるのかの1週間のプログラムを作り、体調を観察しながら、季節などの環境の変化に伴った栄養バランスを考えていきます。なんだかとってもめんどくさそうに聞こえますが、自分の食生活を考えてみてください。毎日の食事を必要栄養素やエネルギーを計算して完璧に食べているわけではありませんよね。「昨日はちょっと油っぽいものを多く食べたから今日はさっぱりしたものを」のように身体が自然とバランスをとっています。(体が正常に働いていればの話しですがノ)しかし、犬の場合、食事を与えるのは飼い主で、かつ体調を自分で説明する訳にもいきません。そこで飼い主の観察と食生活に関する知識が重要になってきます。これは人間の赤ん坊を育てるのに近いような気がします。ただし、種族が違うので当然その食性や必要な栄養素もことなります。しかし、「必要なものをとり入れ、不必要なものを排泄する」その生体維持の仕組みは同じです。
 また、飼い主は犬が「好きなもの=必要なもの」でないことを認識する必要があります。たとえばインスタント食品がすきな子供がそれだけを毎日食べているのを健康に良いと思う親はいませんよね。犬でも同じことが言えます。
 また、「ごはんと味噌汁」や「残飯」の食事を「手作り」とされている飼い主様がいますが、これは「必要なもの」ではなく、「不必要なもの」をとり入れる結果となるので、生体維持の法則に反するわけです。また、肉だけを必要量以上にあたえ、安心している場合も同様です。つまり「必要なもの」とは「必要な量」であることが重要であり、不足も過剰も生体維持のバランスを崩す原因となります。
 手作り食での食材選びに対する私のこだわりは「自分が食べない質の食材は与えない」です。栄養は質が高ければ少量で必要量を吸収できるので、胃腸にかかる負担も軽減されます。「不必要なもの」を多くとりこめば身体はそれを排泄すべく働かなければならない上に、正常に働くために必要な栄養が十分に補給されません。「骨折り損のくたびれもうけ」といったところでしょうか。結果身体に負担がかかり、継続的に繰り返されれば病気の原因にもなります。
 人間でも犬でもそれぞれの食性や生活環境に適した食べ物を、必要な量と食べ方で摂取し、身体に優しい食生活を送り健康でいられる、そんな「手作り食」を研究し、みなさんに知っていただけるよう努めたいと思います。

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