子犬の食事量ってどのくらい!? パート1

子犬の食事量が分からずに、何便や下痢を生じていることがよくあります。多くの場合、与えている食事量が実際に必要な量よりも多いことが原因で生じています。子犬はまだ成長段階。身体もその働きも未熟です。よって、この未熟さに対応しながら十分な栄養とエネルギー、および食事の与え方により健康に成長させなければなりません。ところが、子犬の時期の軟便や下痢を長引かせることは、子犬の成長に悪影響を与えるばかりではなく、将来的な健康状態にも影響を及ぼします。

 軟便や下痢はその陰に様々な原因がありますが、よほどひどくない限り子犬は普通通りに食欲があるものです。実はここが落とし穴。飼い主様は「食べているから『まだ』大丈夫だろう」とそのままの状況を長引かせてしますのです。一方で食べているのに思うように体重が増加しない子犬を心配には思います。いったい体の中で何が起こっているのでしょうか?

 今回は、その問題を食べたものが通る道である消化器官に着眼してみましょう。消化器官とは、口、食道、胃、小腸、大腸、そして肛門から便が排泄されるまでをさします。この中で犬の場合、消化吸収に大きくかかわるのが胃、小腸、そして大腸です。犬は飲み込む食性なので口の中は食べ物を切り割いて飲み込むのが目的であり、人間のように唾液と合わせてすりつぶすようには作られていません。歯の形を比較すると分かりやすいですね。
 次に食道を通って胃へ入ります。食道は胃へと食べ物を送り出す筋肉運動がありますが、食べたものはここでは消化されません。最初に消化が始まるのが次の消化器官である「胃」です。私たち人間がたくさん食べると「あ〜苦しい〜」と感じるように、胃は伸縮性のある袋ですが、それでも限度があります。子犬の胃は伸縮性も許容量も未熟です。一方で育つために多くの栄養とエネルギーをとらなければなりません。
 一見矛盾する話ですよね。そこで、食事の与え方に工夫が必要になります。子犬を飼い始めたころドライフードをふやかしていたのを覚えていますか?ふやかすことで早食いの子犬が吐き戻したり、必要以上に食べ過ぎたり(「与えすぎたり」が正しい表現ですね)するのを防ぐことができます。また小さな胃という巾着袋を壊さないように使うには1日に必要な量を小分けにして与えれば消化に負担がかかりません。これを少量頻回といいます。
 一般的には4~5か月に達するまでは1日に3~4回には分けて与えます。ところが、最近では飼い主様の都合を考え、ペットショップから販売され手渡せる2か月齢ごろですでに1日に2回、それもふやかさない状態で給与していることが多いようです。動物は環境に対応性があり、それでも問題がない子犬もいますが、いままでの話の流れからそれが未熟な消化器官には負担であることが分かりますね。
 胃で食べ物が十分に「かゆ状」になってから、小腸へ運ばれれば、そこでさらに未消化物が消化され、そして栄養素として吸収されていきます。ところが、「かゆ」状にならなかった未消化な食べ物は次の通路「大腸」へと運ばれます。ここは水分を再吸収し、便を形成するのが主な仕事です。本来の仕事には必要のないものが多くあれば、何らかの問題がそこに生じるだろうことが想像できますね。それが、「腸内細菌叢」の乱れです。

 腸内細菌叢は「身体を守る免疫の働き」、「栄養素を吸収する環境を整える」などの大きな働きがあります。

 つまり、下痢や軟便はこの腸内細菌叢がうまく働いていない証拠であり、かつこれを長引かせるといくことは身体を守る免疫能の低下、栄養の吸収不良というダブルパンチを受けている状態なのです。こんな状態を長引かせたのでは、健康で元気な子犬は育ちません。体重増加がないのもうなずけますね。

 では、「なぜ子犬の食事量を飼い主様が迷うのか?」について次回パート2で説明したいと思います。

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