泌尿器外科手術(前立腺)

泌尿器外科手術

研究者:山村穂積

1.泌尿器外科術前管理

 どのような手術であっても通常手術に先立ち全身状態、肝機能、腎機能などの評価をする。一般検査、血液検査、レントゲン検査、その他を行い、全身状態や肝機能、腎機能を少しでも改善するように努力する。たとえば、中等度のGPTの上昇であれば強肝剤の投与を行い、BUNの上昇があれば腎前性の要因をなくす為に、まず乳酸リンゲル液または高張性脱水がある場合には低張な一号液などの補液剤を10ー40ml/kg点滴投与しBUN値を低下させるようにする。高カリウム血症(カリウム値が6.0mEq/以上)や、心電図でのP波やT波の変化がある急性腎不全の場合には特に輸液を中心とする術前管理を十分に行い手術に望む必要がある。また、慢性腎不全ではあらかじめ十分の輸液をしながら脱水症をできるだけ改善しながら手術の準備をする。

2.手術器具

 泌尿器手術器具として特に必要というものはなく一般には通常の外科手術器具で十分であるが、腫瘍のような大きな手術や腎臓切開を行うなどの出血量が多く予想される場合には動脈クレンメや血管鉗子、またはテフロンテープなどの止血用テープを用意する。腎血管の止血や尿道、尿管を通常のコッフェル鉗子のような止血鉗子を用いて挟むと、挟んだことにより血管や管壁を切断したり損傷してしまう可能性があるので行ってはならない。尿管や尿道を切開する場合には注射針の先端を直角に曲げ、その曲げた注射針の先端部分を管腔に突き刺し持ち上げる。そしてその部位に小切開を加え、小切開部位からプラスチックのカテーテルを管腔中に入れその上の正中をメスで切開していくと行いやすい。また血管や尿管、尿道を縫合する場合は必ず針付きのものを使用する。またこのような細かい組織を縫合するような手術の場合には、拡大鏡や手術用顕微鏡を使用することが便利である。
 膀胱からの尿の除去や腹腔洗浄液、前立腺膿瘍などを排液するには吸引器を使用するが、この場合にはまず注射針を吸引器の先端に取付け穿刺吸引する。圧力が抜けてからその部位を切開し吸引カテーテルで吸引する。これにより内容物を外部に漏らすことが少なく感染を最小限にする事ができる。また手術中にこれらの液体が周りにこぼれないようにすることはもちろん、その周りを滅菌タオル等で囲うと良い。また、ゴム手袋に内容物が付着する事があるのでそのような場合には必ず取り替えるようにする。

3.麻酔

 麻酔をかける前には術前管理と同様で血液一般検査が通常必要であり、中でも貧血の状態、肝機能検査や腎機能検査は絶対に必要な部分である。もしもこの検査に異常があればもちろんのこと、少しの異常であってもそれを軽視する事なく、すぐに手術を行わなくても良いような症例は延期し投薬治療をするようにしたほうが良い。特に手術中に低血圧になると各臓器の循環血液量が減少する。中でも腎臓の血流量が減少する。したがって腎臓の血流量が減少すると腎臓が虚血や低酸素症を起こす。その結果ネフロンが障害を受ける。ネフロンが障害を受けると手術後の腎障害となりうるので注意が必要である。従って、血圧は60/mmHg以下に下降させないようにする。通常、乳酸加リンゲル液を点滴静注し正常に維持できるするように血圧を調整する。従って麻酔とともに術中術後の点滴輸液は重要なものである。
 麻酔薬は特殊なものはないが、腎機能が悪いと、麻酔薬の排泄が悪いことはいうまでもない。ガス麻酔の中では、ペントレン(メトキシフルレン)は人において多尿、低張尿、窒素血症、そして高ナトリウム尿を起こす事が知られ腎機能が悪い場合には使用しない。ハロセン、イソフルレンは問題なく使用できていることから現在ある麻酔薬の中で腎不全の動物に使用できる麻酔薬とも思っている。そして術後管理として酸素吸入を麻酔が覚醒した後も続ける必要のある場合がある。

4.前立腺疾患

 前立腺疾患は通常は老齢犬に発生するが、中には3才齢位でも経験する事がある。また前立腺肥大のほとんどは良性の過形成(良性前立腺肥大)であり、ホルモンの影響が複雑に関わっている。しかし前立腺疾患への診断や初期治療が重要でありホルモン療法や抗生剤投与による治療処置が難しい事は事実である。
 病態は、過形成(良性過形成)、急性または慢性の感染(前立腺炎)、膿瘍形成(前立腺膿瘍)、嚢胞形成(前立腺嚢胞、副前立腺嚢胞)そして腫瘍(前立腺癌)などの結果として肥大する。
 いずれにしても、過形成以外は思うように治療効果が上がらないのが現状である。

1)症状
前立腺疾患の症状は、肥大した前立腺により結腸や尿路が圧迫され、便秘やテープ状の便、排便困難、失禁や無尿を起こす。また時として膀胱炎などの尿路感染症の併発や陰茎尿道口よりの時々の出血、膿尿または排尿と関係なく膿の排出がある。また高齢犬においては会陰ヘルニアや直腸嚢(憩室)が同時に見られる事がある。

2)診断
適切な病歴や臨床症状をしっかりと踏まえたうえで、後腹部の触診をしっかりと行う。そして前立腺肥大を疑ったら、肛門より指を入れ後腹部の触診と直腸からの触診を同時に行う。前立腺は骨盤低部の正中に尿道が触知でき、その前方に触れる事ができる。その結果前立腺の大きさ、形状、そして前立腺の左右2葉を確認し、その対称性、表面の輪郭、硬さ、疼痛、可動性そして前立腺の位置などを触診し総合的に判断をする。

3)X線検査
前立腺肥大の確認をするには後腹部のX線検査が重要な補助的手段である。通常前立腺は骨盤腔内にあり単純X線写真で確認されにくいか確認できない。前立腺が肥大してくる事により、その位置が前方に変異し形の変化などが解る。前立腺は膀胱より後方に位置するが、膀胱との確認をはっきりさせるには逆行性の陽性造影、陰性造影または陰陽性造影を行い、その結果前立腺の左右対称性、相対的な大きさ、造影剤の尿道前立腺への逆流などを評価する。しかしX線像は特異的ではなく、過形成、感染、腫瘍などの分類は出来ないので他の検査を併用する。

4)超音波検査
X線検査では前立腺肥大が確認されてもその内容物が何であるかは解らない為に、超音波検査により前立腺の構造を観察する。超音波検査は前立腺内が個体組織なのか液体組織かを識別できる有用な手段である。超音波検査時に前立腺であるかの確認は、まず膀胱を識別する。膀胱内に尿貯留している場合には簡単に確認できる。そしてそのすぐ後方に前立腺が位置し、肥大があると簡単に映し出すことができ鑑別できる。そしてその内容が実質組織であれば過形成または腫瘍などが疑え、液体であればその状態から前立腺膿瘍や嚢胞を考える。またその組織の形、大きさ、石灰化などにより総合的な形態からその病態を認識する必要がある。 超音波検査法では、膿瘍、感染あるいは過形成、そして前立腺嚢胞の部分を確定し、嚢胞性と非嚢胞性疾患との鑑別が出来る。しかし嚢胞と膿瘍の区別は難しい部分がある。また前立腺の疾患の進行状況、手術後やその治療効果などを確認するのには必須である。

5)前立腺分泌物検査
前立腺の感染などによる炎症の有無を調べるには前立腺マッサージを行い分泌される前立腺液を採取し検査する必要がある。
作成した塗抹標本を鏡検すると正常所見として、立方上皮細胞、円柱上皮細胞、ごく小数の赤血球、精子などの出現がある。感染があると好中球を中心に白血球が多数出現する。もし腫瘍細胞があれば前立腺腫瘍の確認ができる。鏡検により感染や炎症の存在が示唆された場合に、はさきに無菌的に採取しておいた前立腺液の細菌培養、同定及び感受性検査をおこなう。しかし慢性前立腺炎においては細菌が生えない事もある。前立腺疾患は、抗生物質や抗菌剤の投与が重要であるが、臨床上の反応などを考えながら投薬の決定する。また、超音波ガイドを利用しながら前立腺内容物をバイオプシーすることは可能である。

6)血液生化学検査
前立腺疾患としての診断に特異的な所見はないが、全身状態を評価把握するには血液生化学検査は重要である。

7)尿検査
尿路感染のスクリーニング検査として尿検査は必須であり、尿沈査や細胞を鏡検する事は重要な手段である。雄犬で尿検査により血尿、膿尿、細菌尿などが認められる場合に、単なる膀胱炎と思っていると前立腺からの細菌感染の場合があるので、膀胱炎と前立腺疾患のふるい分けは重要である。

5.良性の過形成(良性前立腺肥大)

 尿の出が悪いなどの所見をはじめとして、いきみや尿失禁がありリボン状の細い便をし、散発的な無尿症の症状を呈する場合に、肛門より指を挿入し前立腺を触診すると硬く感じられ前立腺肥大が存在し左右対称性に腫張しているが疼痛がない。また、これらの症状がなにもない場合など良性の過形成で正常の年齢的変化の場合が多くある。しかし左右不対称の前立腺が触診された場合には、年齢を考慮し腫瘍を考える。

1)X線検査所見
X線写真では、骨盤腔かその前方に拡大した前立腺が確認できる。前立腺と尿道の詳細な輪郭を見るには、膀胱尿道造影法を用いる。それには空気と陽性造影剤による二重造影法がわかりやすい。

2)尿検査所見
尿の一般検査で潜在的な感染がなく異常がなければ、さらに詳しい検査を通常行っていない。

3)治療
しぶりや排尿困難に対しては対症療法を行うとともに去勢手術をまず行う。去勢する事により1ー2週間で腫大した前立腺は退行し始め、症状は軽減し治癒する。通常1月程度で前立腺は萎縮する。

6.前立腺炎

 前立腺炎は前立腺の炎症疾患を示すが、病型は急性と慢性に分類され、圧倒的に慢性症が多くある。急性感染症は、多くは発熱と共に、排尿時や排糞時に痛がる事がる。前立腺の直腸よりの触診では極度の疼痛がある。
 慢性の前立腺炎は急性前立腺炎の治療の不備の結果として起こり、再発を繰り返す膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎などの尿路感染の症状があり、前立腺膿瘍に移行する事が考えられる。前立腺は左右対称性に肥大し、肥大の程度はさまざまであるが疼痛はない。

1)尿検査所見 慢性前立腺炎の所見として膿尿と血尿がみられる。

2)治療
急性前立腺炎の場合に去勢手術をするとともに前立腺マッサージ液の培養及び感受性検査により起炎菌を明確にし適切な抗生物質や抗菌剤の投与をする。この抗生物質や抗菌剤は3ー4週間の投与を続け、再度の培養や感受性検査を行うとともに尿路感染の波及がないかのチェックをする。前立腺炎は十分な抗生剤、抗菌剤等の薬剤投与を続けるようにしないと再発率が非常に高い。
前立腺の血液関門は急性前立腺炎の場合には破壊されているので、抗生物質は血液関門を通過出来ないタイプのものでも良いわけであるが、しかし、慢性前立腺炎の場合での抗生物質の投与は前立腺血液関門を通過できるタイプのものでなくては効果がない。また、抗生物質や抗菌剤の投与は3ー6カ月間と長期に続ける必要があるが、定期的に全身状態の検査や臨床検査を行い、闇雲に投与を続けるのは避けるようにしたい。

7.前立腺嚢胞

 前立腺嚢胞はかなりの大きさのサイズになってから発見され後腹部や骨盤腔部をしめるほどに大きくなり腹部膨大が認められる事がある。臨床症状は排尿困難や頻尿そしてしぶりがあり、場合によっては尿道から分泌物がある。直腸検査により尿道周囲部で肥大した腫瘤は左右不対称であり波動性があるように感じられる

1)X線検査所見 かなりの大きさの前立腺を認める。

2)超音波検査所見 腫大した前立腺内に高エコーによる混濁した液体の存在が考えられる。

3)治療 外科手術を行うしか方法がない。去勢手術と被膜下前立腺摘出術や嚢胞の切除を行う。

8.副前立腺嚢胞

 副前立腺嚢胞はほとんど無症状である。前立腺嚢胞と臨床症状は類似しているが、直腸検査で実際の前立腺の存在がありさほどの肥大がないために前立腺疾患と考えないでしまう。

1)X線検査所見
単純撮影では膀胱と位置が同じように見えるため、膀胱の位置確認をするには逆行性陰性造影または陰陽性造影を行う。通常の副前立腺嚢胞は表面に石灰化があるとされている。

2)治療
去勢手術をし副前立腺を摘出する。摘出は鈍性に周囲組織から分離し切断する。

9.前立腺膿瘍

 前立腺膿瘍は、前立腺実質内に限局して膿が蓄積するものであると定義されている。
 前立腺膿瘍の原因は、おそらく急性前立腺炎や、前立腺肥大による尿路閉塞に感染症が加わった結果と考えられる。これにより、再発する尿路感染、リボン状の便、しぶりや排尿困難の症状があり、中には発熱をする。直腸検査では、非対称性に腫大した前立腺に波動性がある。しかし前立腺嚢胞と膿瘍の鑑別は難しいか、鑑別出来ない。前立腺膿瘍の場合には、尿検査で、血尿、膿尿(白血球尿)、あるいは細菌尿が認められる。

1)X線検査所見 巨大な前立腺を認める。

2)超音波検査所見
前立腺部の液体部分の鑑別は非常にしやすい。しかし診断のために、液体部(膿瘍部)に太い針による内容の吸引をすると、限局性の腹膜炎を起こす可能性があるので注意が必要である。

3)治療
去勢をすると共に抗生物質や抗菌剤の投与を行う。そして外科的に造袋術や被膜下前立腺摘除術を行い廃液処置をし治療をする。被膜下前立腺摘除術は、前立腺膿瘍適応するが、前立腺膿瘍はあたかもミカンのごときものであるから、その実だけを除去して皮を残し包みなおす手術法である。前立腺全摘出術は大きな前立腺膿瘍では、前立腺の骨盤尿道部を腹腔まで引き出し、また前立腺部の血管を露出する事が出来ず苦労する。そして術後しばらくの排尿障害を経験しているのであまり勧める事が出来ない。

10.前立腺腫瘍

 前立腺腫瘍は腺癌を経験しているが、前立腺腫瘍の組織タイプとしては文献的には腺癌以外の良性腫瘍もあるようだが経験していない。前立腺腫瘍の臨床症状は前立腺は肥大しており前立腺嚢胞となっていた事から、腫瘍の診断は早期には何かの徴候がないと発見できない。従って発見が遅いために肥大し、嚢胞となる事から診断の難しさがある。また手術をする場合に経験的には膀胱壁への癒着などがあり前立腺全摘出は実際に出来ない。前立腺腫瘍の発症年齢は、他の腫瘍と大きな差はないようである。

1)臨床症状
しぶりおよび排尿障害、殿部の虚弱、削痩、後肢の跛行や不全麻痺、それとともに腹部後方の疼痛および殿部の腫脹。直腸検査により、前立腺は不規則に腫大し、非常に硬く、骨盤腔に付着しているように感じられる。

2)尿検査所見 膀胱炎所見が認められる。

3)血液生化学検査所見 特徴づけた異常所見は認められない。

4)X線検査所見
腫大した前立腺(前立腺嚢胞、膿瘍と同様の所見)が認められるが、その大きさは巨大ではない。

5)超音波検査所見
肥大した前立腺でその周囲組織は肥厚し、組織の内部は液体が存在し、嚢胞や膿瘍を思わせる。実質の形は不整型で凸凹を呈している。

6)前立腺マッサージ液所見
通常前立腺は大きく、非常に硬く、前立腺マッサージは行いにくいか、又は行えない。細胞には異型性が認められる。

7)治療去勢手術をすることで、正常な前立腺や過形成による肥大した前立腺を退縮させることは出来るが、前立腺腫瘍の患犬に去勢を行っても腫瘍の進行の変化は見られない。したがって予後不良である。もしも前立腺全摘出が可能であれば試みる必要がある。一般には転移や癒着があり前立腺全摘出は不可能なことが多い。したがってその犬が衰弱した場合には、安楽死をする必要がある。そのほかには、エストロゲン療法があるがその効果はまだ不明である。

11.外科手技

1)去勢
去勢はすべての前立腺疾患では実施すべきである。良性の前立腺肥大に対しては、去勢のみで十分効果がある。しかし前立腺嚢胞、前立腺膿瘍及び腫瘍の治療は去勢のみでは無効であるので、他の手術方法とともに実施する必要がある。

2)前立腺造袋術
造袋術は、前立腺膿瘍や嚢胞の治療に使用する処置である。術式は、仰臥位に固定し後腹部正中切開を行う。包皮を片側に反転させ白線部を切開する。大きくなった前立腺膿瘍を動かないように固定するために、前立腺膿瘍壁表面と腹腔壁切開創とを吸収性縫合糸で丁寧に連続縫合をする。この場合の縫合線は楕円形に縫合していく。腹腔切開壁面に固定された膿瘍壁を吸引器に太めの注射針を取り付け穿刺し内容物を吸引するか、吸引できない場合には膿瘍壁に支持糸を2本取り付け小切開を加えその部より吸引する。圧がなくなってから切開を加える。そして、さらに内容物を吸引器にて吸引排液をする。排液後、切開創を大きく開き前立腺膿瘍壁面を腹部切開創から外に出し、直接皮膚に非吸収性縫合糸で結紮縫合する。縫合糸を膿瘍の切開創の断端より十分離れた場所を通し、皮膚は膿瘍壁面で十分かぶせるようにする。ついで腹部切開創を閉じる。この場合の開口部は大きく作ったほうが排液するのに良い。膿瘍内を生理食塩液と抗生物質を用いて繰り返し噴射洗浄する。術後は、抗生物質や抗菌剤の全身投与と、イソジン液及び抗生剤加生理食塩液で膿瘍内の噴射洗浄を行う。治療経過中に開口部が縮小し閉じてしまい液体が再貯留する場合には、開口部に太いカテーテルを挿入し縫着して洗浄できるようする。

3)被膜下前立腺切除術
術後は、閉鎖式にて尿道カテーテルを4ー5日留置する。膿尿消失しても細菌尿が認められることがあるので、抗生物質や抗菌剤の全身投与を長期に続けるようにする。この被膜下前立腺切除術は、前立腺全摘出術に比べ、手術が行いやすく、従って手術時間が短縮でき、血管や神経に障害を与えず、術後の垂れ流しなどの合併症が少ない利点を持っている。

4)前立腺全摘出術
前立腺全摘出は、腫瘍の症例に適応される。従って前立腺腫瘍が早期に発見されたならば前立腺全摘出を行う。この際に不必要な合併症を起こさないようにするために、前立腺に供給されている血管や神経について知っておく必要がある。
前立腺の血管は、泌尿生殖器動脈から主に供給されている。この血管は、前立腺の上に付着している脂肪組織をよけ、膀胱とともに前立腺を少し回転させると確認できる。この時に膀胱に走行している動脈を切ったり結紮しないように十分の確認と注意が必要で丁寧に扱うようにする。

5)前立腺全摘出ができなかった場合
前立腺腫瘍で全摘出を行うことが無理であった場合には一時的に前立腺の部分カテーテルを留置し、排尿をたやすくすることができる。
膀胱切開を行い、尿道に太めのビニールカテーテルを膀胱側より挿入し前立腺の部位を通過させたところで止める。膀胱頸部でカテーテルを切断し、膀胱内でそのカテーテルがずれないように固定する。これにより一時的な排尿困難が解消できるが、1ヶ月ほど垂れ流しになる欠点がある。しかし長期には尿の垂れ流しがある程度止まり延命効果があることは確かである。