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奈良なぎさ(なら・なぎさ)
プロフィール

1998年 「NEW YORK SCHOOL OF DOG GROOMING」(アメリカ)を卒業。1999年「The British Institute of Homeopathy」(イギリス)の「Nutrition & Herbology」コースを終了。2000年「School of Nutrition Science」(アメリカ)を卒業。同年、アメリカ・カリフォルニア州の「Nutrition Consultants」に登録。現在、当院に動物の栄養指導者として勤務しながら、動物と人間の個体別代謝システムの違いによる効果的な食事方法や、それに伴うライフスタイルなどを「CLAYTON COLLEGE OF NATURAL HEALTH」(アメリカ)の「HOLISTIC NUTRITION」コースを終了。現在、修士課程コースにおいて研究中。日本ペット栄養学会会員。ペット栄養管理士。

 

 

ペット栄養学教室

講師:奈良なぎさ


「基準値」への過信 2006.9.30

 先日、ロンドンのファッションショーで5人のモデルが「やせすぎ」を理由に出演拒否されたというニュースがありました。その理由はモデルのように細くなりたいと『拒食症』になる若い女の子たちを救うためであり、国が打ち出した対策でした。出演拒否されたモデルたちは「モデルは、そもそも背が高くてやせているものよ!」「でも私たちは、とても健康だわ!!」とこの決定に不満そうです。町では「痩せすぎは不健康だからいいと思うわ」などなど….物議をかもしていました。

 今回彼女たちの「やせすぎ」の判断基準に使用されたのがボディーマス指数(Body Mass Index)といわれる方法で、体重kg÷身長2で計算します。18以下だと「やせ」に入ってしまいます。例えば私を例にとって考えて見ましょう。164cmで47kg、BMIを計算すると17.5です。そして、その指数による標準体重は59kgです。私は、見た目は細いかもしれませんが、おそらく標準体重である59kgもあったら、膝や腰などに負担がかかり、日常生活に支障が出ることでしょう。なぜか?その体重を支えるために必要な骨がそんなに太くないからです。つまり、この計算法は身長と体重という表面的な数字から打ち出したものであり、それを支えるための骨や筋肉のつくりの違いを考慮していません。また、骨や筋肉も見た目の量は同じかもしれませんが、その密度や水分量によっても重さは異なります。支えが細い、あるいは華奢なところに許容量を超える重量がのりかかれば負担が他の部位にくることは想像できますよね。問題の構造欠陥住宅のようなものです。

 人々は概観でその印象や良し悪しを評価する傾向があるため、このような単純な「基準」に左右されがちです。しかしながら、物事に「絶対」はありません。「他の要素との比較」による「全体的な判断」が重要なのです。

 これはペットについても同様です。見た目や体重のみで「うちのコって太っている」と考えるのは勘違いというものです。その個体の骨や筋肉の様子や健康状態とあわせて評価しななければ、かえって健康なその個体から健康を奪うようなことも考えられます。「標準」から外れることを「いけないこと」または「はずかしいいこと」のように感じるのか、ペットの食事も突如低エネルギーのものに切り替えたり、量を減らしたり、大量の野菜でかさを増やしたりします。その結果必要な栄養が不足する、あるいは吸収できないなどのデメリットが生じます。さらにこの状態が継続すれば健康を害する結果となるのです。

 このように単なる「基準値」に左右されるのは非常に危険です。人の判断のみでしか食事を得られないペットはなおさらです。見た目や基準値で判断する前に、現在の食事は自分のコに適しているのか、十分なエネルギーと栄養を与えているのか、運動や環境はどうか、排便や排尿の状態は良好か、骨の太さや筋肉量はどうか、などなど、眼には見えない要素こそ考慮すべき点なのです。

 また、体重が基準値であっても、精神的に不健康であるのは健康だとはいえません。「健康」とは心身ともに健康であることをいいます。さらにそれは個体差があり、基準値が全体の基準ではなく、「その個体の適正値」を探すことこそ健康の秘訣だと思います。

 そして、誰よりもされを観察し、探すことのできるのは飼い主さんですよね。

 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED