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奈良なぎさ(なら・なぎさ)
プロフィール

1998年 「NEW YORK SCHOOL OF DOG GROOMING」(アメリカ)を卒業。1999年「The British Institute of Homeopathy」(イギリス)の「Nutrition & Herbology」コースを終了。2000年「School of Nutrition Science」(アメリカ)を卒業。同年、アメリカ・カリフォルニア州の「Nutrition Consultants」に登録。現在、当院に動物の栄養指導者として勤務しながら、動物と人間の個体別代謝システムの違いによる効果的な食事方法や、それに伴うライフスタイルなどを「CLAYTON COLLEGE OF NATURAL HEALTH」(アメリカ)の「HOLISTIC NUTRITION」コースを終了。現在、修士課程コースにおいて研究中。日本ペット栄養学会会員。ペット栄養管理士。

 

 

ペット栄養学教室

講師:奈良なぎさ


どんな食事がいいのか迷ったときには  2005.9.30

 先日、散歩の途中での飼い主同士の会話です。シェパードを連れていた飼い主さんが、「今年の夏は本当によく下痢をしたし、血便まででて大変だったのよ」とのこと。さらに、「でも、獣医さんは体力が衰えるから少しでも食べさせなさいっていうんだけど、ブリーダーさんは絶食させないさいって言うのよね。どっちが正しいのか分からないわ」すると、その話を聞いていたミニチュアダックスフンドの飼い主さんは、「うちの子は2歳まで毎日のように下痢をして、3ヶ月に一度は血便をして大変だったけど、ビオフェルミンを飲ませるようになってからよくなったんですよ」とのこと。それを聞いたシェパードの飼い主さんは、「でも、もう血便とか出ちゃったらビオフェルミンじゃ効かないわよ」。「下痢をしたときはおかゆを作ってあげるの」というダックスの飼い主さんに、「あらー、やさしいわね。うちはとにかく大きいから共同購入で安く買えればそれをあげるの」だそう。この会話の中に、考えさせられる要素がいろいろあったので、今回はそのことについてお話します。

 最初に感じたのは、飼い主さんたちは下痢という症状を意外と軽く捉えているということです。「たがが下痢、されど下痢」、体が異常反応を起こすには何か必ず原因があるはずです。たとえば「下痢」という一つの症状だけでも、原因は小腸なのか、大腸なのか、それとも内臓や酵素の問題なのか、はたまた遺伝性の疾患や伝染病、寄生虫に至るまで実に多様なのです。つまり、解決方法はそれらの原因が分からなければ最善を尽くせないということになります。単に消化能力の問題ならば整腸作用のあるビオフェルミンも可能ですが、もし、シェパード特有の小麦に含まれるグルテンが問題ならば、現在食べているフードを見直す前にビオフェルミンを与えても何の意味もありませんよね。まして、下痢は体内の水分を損失するばかりではなく、体液のバランスも崩れ、損失分を補給しなければ、下痢以上の問題に発展する危険性があります。

 ですから、ただ「水」を飲んでいれば良いわけではなく、「電解質」も補わなければなりません。ですから、1日で治まりその後症状が無いような場合は大丈夫だと思いますが、継続的に起こるような場合は必ず動物病院で、原因を究明し、的確に対処したうえで、食事内容や給餌方法も見直し、できるだけ迅速に対応する必要があると思います。

 また、「おかゆ」の件ですが、下痢をしているときの鉄則は、「固形物を避ける」事なので、水分や電解質を補給しながら下痢の時期を通りこしたら「おかゆ」はOKです。その際は、まずチキンスープ、そしてそのスープで煮込んだ白米、そしてそこに、ペースト状のささみや野菜を徐々に加えながら、状態を観察しながら徐々に量も増やしたり固形の食べ物を加えてくなどの段階が重要です。水で煮るのではなく、チキンスープを利用するのはそこにはアミノ酸のほかにビタミンやミネラルも溶け込むため、水だけよりも吸収が良いのです。また、玄米などのように繊維が多い炭水化物源よりも白米のように消化、吸収が早い素材を選ぶのがポイントです。「体が大きく、沢山食べるから安いフードを与えている」という話は良く聞きますが、残念な気がします。なぜならば犬は「生き物」であり、「物」ではないため、「命の管理」にはそれ相当のコストがかかるのは当然のことだからです。その犬種が欲しいからではなく、自分のライフスタイルや経済性に適した犬を購入前に検討して欲しいと願います。そして、その見積もりは多めに考え、決して「命の管理」を節約の一部にまわさないで欲しいのです。

 さらにこの会話では、「誰の言うことを信じればよいのかわからない」という飼い主さんの言い分です。情報が多ければ多いほど、愛犬のことを真剣に考えれば考えるほどこの悩みは尽きません。そうすると「野生のときは肉と内臓から半消化状の草しか食べていないのだから肉と野菜だけの食事がいいのでは」と極論に走ったりするものです。確かに、野生の食性はそうかもしれませんが、現在家庭で飼育されている犬が人間に繁殖されるようになってからどれだけの月日がたっているのでしょうか?私の個人的な考えとしては「これが絶対という食事はありえない」といことです。犬の種類、性格、性別、環境、体質など様々な要素により個体差があるのが現状です。ですから、どうしたらよいのかわからなくなったら、逆に色々な意見や情報に振り回されるよりも、そういったことをシャットアウトし、自分と自分のコを見つめ直して欲しいのです。生活環境はどうか、どんなときにこのような状態になるのかなど生活を見直すと共通するパターンが見えてくるはずです。そのことを飼い主さんが理解されたうえで、相談に来てくださると、個体に適した食事を探す大きな手助けになります。

 「命を管理する」ことは責任があり、大変なことも多くありますが、それ以上に大きな喜びや大切なことを学ぶことができます。大切に育ててあげてくださいね。

 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED