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奈良なぎさ(なら・なぎさ)
プロフィール

1998年 「NEW YORK SCHOOL OF DOG GROOMING」(アメリカ)を卒業。1999年「The British Institute of Homeopathy」(イギリス)の「Nutrition & Herbology」コースを終了。2000年「School of Nutrition Science」(アメリカ)を卒業。同年、アメリカ・カリフォルニア州の「Nutrition Consultants」に登録。現在、当院に動物の栄養指導者として勤務しながら、動物と人間の個体別代謝システムの違いによる効果的な食事方法や、それに伴うライフスタイルなどを「CLAYTON COLLEGE OF NATURAL HEALTH」(アメリカ)の「HOLISTIC NUTRITION」コースを終了。現在、修士課程コースにおいて研究中。日本ペット栄養学会会員。ペット栄養管理士。

 

 

ペット栄養学教室

講師:奈良なぎさ


カルシウムに対する強迫観念 2005.5.31

 先日、オーストラリアのシドニーから電話で栄養相談がありました!! 「犬がよろこぶ健康長寿メニュー入門」という私が最初に執筆した本を元に手作り食を始められたそうです。なんともうれしい限りです。その方は2歳の柴犬を飼っており、手作り食をはじめたもののいくつかの疑問があるということでした。その一つが「カルシウム源」でした。

 犬かカルシウムの要求量が人間よりも高いため、多くの手作り食を推奨する本では、カルシウムサプリメント、あるいは骨を食すことを薦めています。そこで、その方も最初に「生の鶏の手羽先」を骨ごと与えたそうです。すると吐いてしまった上に、血便が出たのだそうです。動物病院へいくと、それを与えないように指示されました。次に骨の種類に問題があるのかとラム肉の骨を与えましたが、それもはいてしまいました。またもや動物病院で禁止令が。さらに今度は硬いからいけないのだと思い、その骨を圧力鍋で柔らかくしたものを与えてみました。が、やはり同じ結果に。そこで飼い主さんはどうしたらよいのか分からなくなってしまったということでした。もし、AAFCOに記載してある量を基準に手作り食でカルシウムを与えようとすると確かにサプリメントを使用しなければ到底その量は満たせません。カルシウムがヒトより多く必要なのは事実ですが、重要なのはその質と吸収率です。

 カルシウムは、その質や種類により吸収率が異なるため、質が高く吸収率が良いカルシウム源ならば基準値よりも少量ですむし、質が低く吸収の悪いカルシウム源ならば多く摂取しないと必要量を満たせないことになります。一般的に食事中蛋白質の質が高ければ、カルシウムの利用率も高まるとされています。その他にもカルシウムの吸収には、栄養状態、健康状態、年齢、情緒の状態、活動状態、服用の有無など多様な要素が関連してきます。さらに、「過ぎたるは及ばざるが如し」過剰は、不足同様に結石などの疾患を招くこともあります。

 ということは、カルシウムの必要量だけを、一つの数字にあわせようとするのはあまり意味がないことがお分かりになると思います。この方をはじめ多くの手作りを始められた飼い主さんに多いのが、「栄養学の知識」が優先してしまうことです。犬は実際に嘔吐を繰り返しているということは、それ自体が問題であり、学術上の数字が問題ではありません。飼い主は何が愛犬に必要かを知る義務はありますが、その結果がその個体に適しているかどうかは「犬が教えてくれる」のです。「カルシウムを与えなければ」という強迫観念にも似た考えから、何度も嘔吐を繰り返しても、「骨」から気持ちが離れなかったのは、愛犬を思うあまりなのはよく理解できますが、飼い主は「なぜ」それが起きたのかを相対的に見直すことが重要です。

 そのほかにもこの方の手作り食には、使用している食材と土地、気候、犬種とも問題、現在必要なエネルギー量、食物繊維に対する知識不足、食材の配合バランスなどいくつかの点で、このコの現在の体調に適していない点がありました。まずは、カルシウムについて考えるよりも、現在の食事内容がこのコに適しているのかを見直し、体調を観察しながら徐々に、必要があれば足していくというような見直しが必要だと思われました。

 数字やデータに振り回されること無く、わが子に最適な食事や環境を与えることのできるのは、飼い主のあなたにほかなりません。よく学び、観察し、違うと思ったら変更できる応用力を身につけたいものです。


 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED