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奈良なぎさ(なら・なぎさ)
プロフィール

1998年 「NEW YORK SCHOOL OF DOG GROOMING」(アメリカ)を卒業。1999年「The British Institute of Homeopathy」(イギリス)の「Nutrition & Herbology」コースを終了。2000年「School of Nutrition Science」(アメリカ)を卒業。同年、アメリカ・カリフォルニア州の「Nutrition Consultants」に登録。現在、当院に動物の栄養指導者として勤務しながら、動物と人間の個体別代謝システムの違いによる効果的な食事方法や、それに伴うライフスタイルなどを「CLAYTON COLLEGE OF NATURAL HEALTH」(アメリカ)の「HOLISTIC NUTRITION」コースを終了。現在、修士課程コースにおいて研究中。日本ペット栄養学会会員。ペット栄養管理士。

 

 

ペット栄養学教室

講師:奈良なぎさ


栄養サポートチーム 2005.1.31

 先日、人間の病院で患者を栄養的に新しい角度からサポートする特集番組がありました。「患者と栄養」に関しては、一般的にその必要性は感じられてはいるものの、治療自体とはやや疎遠になっているのが現状ではないでしょうか。実際に病院で栄養的なサポートについて質問しても満足のいく回答を得たことはなく、そればかりかあまり関係ないとさえ感じているようで、がっかりした経験があります。しかし、この番組で取り上げられたある病院での「栄養サポートチーム」の成果は、今後の患者と栄養のあり方について大変興味深い内容でした。

 彼らのコンセプトは、「治療やリハビリは、まず患者自体の治癒力を促すように体力や筋力をつけ、それと平行して行なうことで効果を発揮し、さらに目的達成にかかる時間を短縮できる。そのためには、腸が働いているのならば、できるだけ点滴をせずに経腸栄養による栄養補給で、身体の働きを活性化させる」というものです。腸には、全身の免疫細胞のおよそ半分が存在し、腸で活性化された免疫細胞が全身にめぐることで全身の免疫系が活性化されることを前提に考えれば、当然のことのようにも思えますが、ここでポイントとなるのが「全身」という考えです。身体はすべての細胞の連係プレーにより成り立っている非常に緻密な化学工場です。どこか一箇所に支障が生じれば次から次へと問題が生じます。つまり、ロボットの部品交換のように単に問題のある部品を交換するのとはわけが違います。問題のある箇所とそれをサポートする様々な要素を考慮した上で身体を「全体」としてとらえ、それらの働きをサポートするのが「栄養サポート」ができることではないでしょうか。しかし、実際には医療現場は専門分野により分業化されているため、なかなかこのような取り組みができないのが現状です。この病院でも、現在の試みをさらに拡大させようとしても、その手間や時間など諸事情をあわせて考えるとなかなか賛同が得られません。

 しかし、実際に栄養サポートチームによって得られた結果は、患者の術後の回復を早める、高齢患者の床ずれを15%から3%に減らすなど患者にとって喜ばしいことであると同時に、院内感染の40%減少、入院日数を短縮化、など病院側にとっても利益が多いものでした。 また、栄養サポートチームの発足により、処方食も従来の「計算による食事」に加え、「個体に適した与え方」など考慮した「心のこもった食事」になっていました。具体的には経腸栄養から経口食に移行するとき、水分が肺にはいるのを防ぐため、ゼラチンで固めたり、患者の食欲をそそる効果のある素材で作ったゼリーからスタートするといったように段階による工夫や患者の嗜好性を取り入れてレシピを考えています。結果、食べる楽しみがもどるため、量も取れるようになり、体力が回復し、自信を少しずつ取り戻す患者の様子が伺えました。免疫力を支える要素は、栄養をはじめとし様々ですが、精神的な部分が影響することも見逃してはならないと思います。「いかに自身を取り戻し治そうとおう気持ちになるか」が重要です。「治療、栄養、精神」これらが一体化することで患者が満足する新しい医療体制が築かれることを強く望みます。

  一方で、この考え方やシステムは獣医療の世界でも同様なことがいえるのではないでしょうか。 獣医師はすべての分野を理解しているため逆にこのシステムは取り入れやすいとも考えられます。データがないと何かと動きにくい現状はありますが、食事の種類、形態、与え方などをさらに工夫し、病気のペットたちが一日も早く、回復してくれるよう、そして飼い主さんがよかったと喜んで下るような栄養サポートを心がけたいとあらためて思いました。


 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED