院内日誌
退院を待つ野良猫
岡本五月樹(1997年4月16日)
春雨が繰り返し、肌寒い日が続いていますが、ともかく春です。北川動物病院にも新しい獣医師が入りました。長澤先生、馬場先生、山岡先生、坂口先生の4人で、みんな、男の先生です。まだ病院に来て2週間ほどなので、なんだか初々しい感じです。 さて、今病院には20日近く前から入院している猫がいます。病名は「便秘」です。家族に内緒で野良猫の世話をしていた方が、その中の一匹が食欲がなく、ひどく痩せているがお腹だけが異様に張っているので病院へ連れていらしたのです。触診してみると巨大な便の塊と、異常に狭い骨盤腔が触れました。全然人慣れしていない野良ちゃんだったので、騒ぎ声をあげられつつも、院長が便を全部出してくれました。 翌日から元気・食欲ともに旺盛になり、数日で退院可能な状態になりました。でも、病院に運んできてくださった方が、ご家族に内緒で世話をしていた野良ちゃんのこと、新たな問題がありました。 「家の中では飼えません。」・・・・・といっても結腸の拡大と骨盤の狭窄があるので、このまま野良には返せません。毎日お薬を飲ませ、定期的な強制の排便処置が必要です。 「薬があげられません。」・・・・・しかしケージの角で固まっているその子は、もう数日で餌に内服を混ぜさえすれば大丈夫そうな状態になりました。 「雨が降っているので今日は放したくありません。」・・・・・どれも野良ちゃんでは無理のないことです。が、小さな物音にもビクビクして、撫でることさえストレスになっているこの子に、これ以上の入院は残酷ですらあります。家族に内緒なので、基本的に私からは連絡できないことになっています。晴れた日には今日こそお迎えにくるかもしれないと願いつつ、もう20日近くになってしまいました。 野良猫に餌を与えることは簡単でも、安全や安心・十分な健康管理を与えるのは困難です。猫が好きな人は、それ故にだれでもこのジレンマに陥るでしょう。この方はいつも大変頑張っています。いろいろ考えさせられつつ、今日も退院の準備をしています。