院内日誌
腎臓移植の猫
弓削田直子(1996年10月31日)
彼とその家族が当病院に来院したのは今から8ヶ月前になる。彼は8歳になるシャム猫で、この年頃の猫に多い慢性腎不全に苦しんでいた。毎日の点滴でも状態は良くならず、家族全員そんな彼を見てつらい日々を送っており、家族の表情は晴れることがなかった。なんとか治す方法は無いものかというのが、家族全員の必死の頼みであった。 そこで、私の頭に浮かんだのは、麻布獣医科大学の外科教室(私が通っている研究室)で行っている腎臓移植であった。早々にインフォームド・コンセント。そして彼の腎臓移植の実施に至った。 手術後の経過は良好で手術後1週間で退院となり、小春日和の午後、腎臓を提供してくれた新しい家族となる猫ちゃんと共に帰宅した。彼は、お母さんに毎日、免疫抑制剤のお薬を飲まされることがとても嫌いだけどなんとか飲んでいる。そして、今の彼は家族の皆さんと一緒に快適な日々を送っている。若くて元気なもう一人の猫ちゃんが、遊ぼうと彼に寄ってくるとちょっと面倒くさそうな様子はあるけれども、毎日をとても楽しく過ごしているように見受けられる。 彼の病気をあきらめず腎臓移植に踏み切って、家族と共に私も本当に良かったと思う今日この頃だ。犬の腎臓移植に始まって、今は猫にも腎臓移植が可能となった。本当に獣医学は日進月歩だ。