院内日誌
献血の悩み
橋本志津(2000年9月24日)
庭から見える柿の実が黄色くなりました。まだ色づいていない青い実の頃、副院長先生は今日休みの日なのに病院にやってきて突然私に言いました。「私が20年考えつづけて出来なかったことを企画してください。あなたにとってはまだ熱い出来事であるうちに。」献血犬、献血猫を飼主さんから募集することです。これはハナちゃんのことを言っているのだな、と思いました。 ハナちゃんは2週間前に残念ながら亡くなってしまいました。自分で作った血液も、ほかの犬からもらった700mlもの血液も壊してしまう病気でした。まだ7歳で犬盛りだったのに、です。 ハナちゃんが亡くなるまでの1週間、私の1日の仕事はハナちゃんで始まり、ハナちゃんで終わっていましたから、その後2〜3日は、ハナちゃんが居ない病院はすごく違和感がありました。そんなときに、副院長先生からの提案があったのです。副院長先生もハナちゃんと私ををずっと見守ってくれていた一人でした。 ハナちゃんはゴールデンレトリバーでした。同居のボビーくんとモモちゃんも大型犬でしたがいずれも10歳前後と初老であったため、献血犬として協力してもらうには抵抗があり、結局私は別の元気で若いレトリバーの2匹に治療に協力してもらいました。2匹のわんちゃんの存在はとても幸運なことだったのですが、飼主さんにとってはそのことが申し訳無かったようです。それでもハナちゃんは飼主さんの祈りもむなしく寂しさを残していってしまいました。 血液はいつ必要になるかわからないし、必要となれば数時間のうちに獣医師は動かなければなりません。そのときタイミングよく血液のあう献血してくれる犬や猫がいればラッキーだけど、そうでないときだってあります。犬や猫にだって、もうすぐ人間のように献血ルームや献血車が配備されて血液を保存しておく施設や設備ができるかもしれない、すぐに血液型を調べられてもらって、元気な血液です、だいじょうぶ、獣医師はそんなこといって、ワンちゃん、ニャンちゃんみんなはおやつとかごほうび貰えるの。うーーーん、おとぎ話かも。 柿の実が赤くなる頃には北川動物病院版、生きる血液バンクたちが誕生するかもしれません。