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やどり木カンファレンス

胸腺型リンパ腫が疑われた犬の1例

2008年5月

前田克志、田辺岳、弓削田直子

【はじめに】

 リンパ腫は実質臓器から発生するリンパ系細胞の悪性腫瘍である。リンパ腫は、リンパ系または非リンパ系組織において、リンパ系細胞が腫瘍性増殖を起こすことによって腫瘤が形成され、それら腫瘍細胞は種々の臓器に浸潤、増殖して機能障害を引き起こす。犬におけるリンパ腫は、多中心型、消化器型、皮膚型、胸腺型、節外型などさまざまなタイプが認められるがその原因は明らかにされていない。
 今回、胸腺型リンパ腫が疑われた犬の症例に遭遇し、化学療法により良好な経過が得られたため、その概要を報告する。

【症例】

 症例は雑種犬避妊メス8歳齢で主訴は食欲不振と多飲・多尿で来院した。身体検査では体重が10.36kgと前年度の10月の体重と比較して約1kg減少していて触診、聴診で問題はありませんでした。また、尿検査・糞便検査においても異常は認められませんでした。
 血清生化学検査では、Caが17.8mg/dlと高値だったため腫瘍を疑い病日3日目にPTH intact、PTH-rP intactの追加検査を行いPTH-rP intactが25.6pmol/lと高値でした。また、レントゲン検査上では腹部には問題はありませんでしたが、胸部において前縦隔において不透過性亢進像が認められました。そこから、超音波検査においてX線検査で認められた前縦隔の不透過性亢進像を確認するため検査をしました。前縦隔において高エコーのマスが確認でき、それをFNAし、とれた検体をIDEXXに依頼したところ胸腺腫が第一に認められるとの結果がでました。
 そして、第15病日に胸腺腫を疑い、日本大学ANMECに放射線治療か外科手術を依頼しました。検査の結果は心電図検査で除脈と診断されました。また、X線検査を行ったところ縦隔に見られた腫瘤が縮小しており、また超音波検査でもマスが確認されませんでした。以上のことから、胸腺腫ではなく、縦隔におけるリンパ腫と診断され当院において化学療法を行うこととなりました。

【治療経過】

 オーナーとの話合いのもと、ドキソルビシン単独での治療を行うことになりました。DXR一回目の投与後に第36病日に再度血液検査を行いCaの値が正常範囲に戻りました。DXR3回目投与後で除脈が消失しました。4回目の投与後にX線所見で腫瘍が認められなかったため治療を終了しました。そして第114病日現在X線所見で拡大・転移所見は認められなかったです。

【考察】

 今回の症例において縦隔型リンパ腫に対して、DXR単剤療法で寛解が認められました。リンパ腫においてDXR単剤での平均生存期間が7ヶ月で、完全寛解した犬において1年生存率が約20%、2年生存率が約10%と報告されている。そのため、定期的な経過観察が必要であり再発した時のリンパ腫に対する治療法が今後の患者の生存期間を大きく左右すると考えられる。

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