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やどり木カンファレンス

肥大型心筋症と癌性胸水の併発を疑われた猫の1例

2008年2月

鵜飼佳実、徳留史子、北原裕子

【はじめに】
 肥大型心筋症はアメリカンショートヘアーで遺伝的にみられる心筋の求心性肥大を特徴とする心室筋疾患である。肥大型心筋症の症状の1つとして胸水貯留がある。今回肥大型心筋症と確定診断した猫に貯留した胸水の原因として、肥大型心筋症だけでなく癌性によるものの併発が疑われた1症例と遭遇したのでその概要について報告する。

【症例】
 
アメリカンショートヘアー、18歳、雄。食欲不振と元気消失を主訴に来院した。

【初診時所見】

 「立てない」との主訴で来院。それ以前に他院にて椎間板ヘルニアを疑われ、ステロイドの投与をうけていたが、症状の良化が見られなかったとのこと。
  初診時所見として発熱、起立・歩行困難、四肢の筋肉量低下、全身の振戦が認められた。特に前肢の筋肉量低下が著しく、肩峰が容易に触れた。

各種検査所見、診断、治療および経過
 初診時体温の低下および努力性呼吸が認められた。両側後肢は冷感、麻痺しており、股脈は触知できなかった。左側心基底部にて雑音を認めた。血液検査では白血球、クレアチニンホスホキナーゼ、乳酸脱水素酵素、クレアチニン、尿素窒素、リンの値が上昇していた。レントゲン検査にて胸水及び肺水腫所見が認められた。胸水は変性漏出性であり、沈渣における細胞に核異型は顕著でなかった。以上より血栓塞栓症および肥大型心筋症を疑い治療を進めた。
 治療はフロセミド 1mg/kg tid SC、ウロキナーゼ 3000U/head bid CRI、ヘパリン 200U/kg bid SC、アンピシリンナトリウム20mg/kg bid SCを行った。また、初日のみデキサメサゾン0.1mg/kg IVを行った。
 状態が安定した第3病日に超音波検査を行った。FS値44.8%、拡張期心室中隔壁6.4mmであり肥大型心筋症と確定診断した。心電図検査では特に異常は認められなかった。
 第6病日に右側後肢の股脈が触知可能となった。状態も安定していたためカルベジロール 0.1mg/kg bid及びジピリダモール12.5mg/head bidの内服を追加した。しかし第7病日に重度の再生性貧血が認められ、状態が悪化したため内服を中止した。また、胸水が認められ抜去した。この時抜去した胸水では核異形が顕著な細胞が認められ、癌性胸水が第一に疑われたが胸水標本のみでは確定診断に至らなかった。そして第11病日に斃死した。

【考察】
 本症例における類症鑑別として、心疾患、腫瘍、ウイルス性疾患、内分泌性疾患、免疫介在性疾患等が挙げられた。しかし飼い主の希望により詳細な検査を行えず、類症鑑別を十分出来なかった。認められる症状が肥大型心筋症の症状と一致していたが、他の疾患の併発も疑える複雑な病態であった。


 

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