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やどり木カンファレンス
多発性神経根炎を疑った犬の1例
2008年1月
中山史子、岡田みどり
【はじめに】
犬の多発性神経根炎とはヒトのギランバレー症候群に類似した病態と考えられている。かつてアライグマに咬まれたクーンハウンド種に多くみられたことから、クーンハウンド麻痺と記されたこともあった。原因は不明だが、昨今免疫が関与していると考えられている。症状として急速に進行するLMN性の四肢不全麻痺が起こり、知覚過敏となることが多いとされている。治療方法は支持療法のみである。
【症例】 犬、ミニチュア・ダックスフント、8歳齢、未避妊雌。既往歴なし。
【初診時所見】
「立てない」との主訴で来院。それ以前に他院にて椎間板ヘルニアを疑われ、ステロイドの投与をうけていたが、症状の良化が見られなかったとのこと。
初診時所見として発熱、起立・歩行困難、四肢の筋肉量低下、全身の振戦が認められた。特に前肢の筋肉量低下が著しく、肩峰が容易に触れた。
【各種検査結果(当院)】
- 血液検査 : LDH、CKの軽度上昇、CRP正常、抗核抗体陰性
- レントゲン検査:著変なし
- 神経学的検査 :四肢の姿勢反応および脊髄反射の低下
以上の検査によりLMN性の神経疾患、ミオパシーなどを疑い、大学病院へ上診した。
【各種検査結果(大学病院)】
- 血液検査:トキソプラズマ抗体、ネオスポーラ抗体、咀嚼筋筋炎抗体、アセチルコリンレセプター抗体はすべて陰性
- CT,MRI検査:L1-L2における軽度脊髄圧迫所見
- 筋電図:異常波形の観察
- 神経伝達速度:遠位より近位での伝達速度の遅延、F波の遅延
【診断】
多発性神経根炎の疑い
【経過】
今回の症例においては筋力の低下が著しく、体を支えることが困難であったため、筋力量増加のためにリハビリを行った。ハイドロセラピーを中心としてリハビリプログラムを以下にように組んだ。リハビリは週に1回の通院で行うよう計画した。
筋肉量 ⇒ ハイドロセラピー・エクササイズ・ストレッチ
持久力 ⇒ ハイドロセラピー・エクササイズ
起立訓練 ⇒ バランス訓練
歩行訓練 ⇒ エクササイズ
第10病日:短いながらも起立が可能となり、数歩歩行できるようになる。体を支えることができないため、ハイドロセラピーのみ行う。
第72病日:前肢の筋肉量が不十分であったため、ハイドロセラピーを続けた。起立・歩行可能であったためエクササイズ、バランス訓練を追加した。
第120病日:起立・歩行ともに支障なく、筋肉量の増加が認められた。ハイドロセラピー、エクササイズを実施した。この後2回のハイドロセラピーを行い第160病日に治療終了とした。
【考察】
- 重度の筋力低下が認められる症例においては神経学的検査で神経疾患でなくても異常を示す場合もあり、今回の症例においても原因が神経にあるのか筋肉にあるのかの判定は院内の検査系のみでは困難であった。
- 多発性神経根炎罹患患者において筋肉量低下が著しい場合はリハビリが治療の中心となるため、リハビリプログラムの組み立てが重要となる。今回の症例では軽度椎間板ヘルニアも合併していたため、負担の少ないハイドロセラピーが有効であったと思われた。
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