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やどり木カンファレンス

脊椎脱臼の症例に対するリハビリテーション

2007年9月

阪口貴彦


【はじめに】

症例)
シーズー、雄の12歳で、2mの高さから落下後、立てなくなったとのことで来院した。意識レベルは正常だが、強い胸腰部の痛みを呈しており、痛みにともない呼吸促迫であった。外貌検査より胸腰部での脊椎骨折・脊椎脱臼を疑い、神経学的検査、血液・生化学検査、X線検査を実施した。


【神経学的検査所見】

  • 脳神経検査には、異常が認められなかった。
  • 脊髄神経検査は、下記に示した通りであった。

姿勢反応)

 

LF

RF

LR

RR

固有位置感覚  knuckling

2

2

0

0

        paper slide test

 

 

NE

NE

踏み直り反応  触覚性

 

 

0

0

        視覚性

 

 

0

0

跳び直り反応

 

 

0

0

脊髄反射)

 

LF

RF

LR

RR

膝蓋腱反射

 

 

2

2

前脛骨筋反射

 

 

2

2

腓腹筋反射

 

 

NE

NE

屈曲反射

2

2

2

2

会陰反射

 

 

2

2

深部痛覚 

 

 

1

0


【X線検査所見】

 第12-13胸椎間で13胸椎が12胸椎に乗り上げる形での脱臼をみとめた。


以上の所見から第12-13胸椎部の椎体脱臼と診断し、椎体・脊髄神経の精査を目的としてCT検査・MRI検査後、治療として手術による椎体固定を提案した。


【CT検査所見】

 第13胸椎近位端への背側への突出が認められた。第12-13胸椎間の脊髄デンシティの増加が認められた。


【MRI検査所見】

 第12-13胸椎間における脊髄の圧迫病変を認め、第13胸椎―第1腰椎間の軽度の圧迫も認められた。


【手術方法】

 手術は、プロポフォール導入、イソフルレンで維持し、手術部位を常法どおり消毒を実施した。第12・13胸椎椎体に1.6mmのpositive thread pinを第12では頭側に向けて、第13胸椎では尾側に向けで挿入し、骨セメント(メチルメタクリレート)で固定した。次に脊髄の圧迫の減圧を目的として背側椎弓切除を実施した。さらに、固定の補助を目的として第11胸椎と第13胸椎棘突起にワイヤー締結を行った。常法どおり閉創した。


【術後のリハビリテーション】

 リハビリテーションは、以下のようなプログラムでリハビリテーションを計画・実施した。

日付 1週目 2週目 3週目 4週目 5週目 6週目以降

冷却

         

温熱

         

レーザー

           

マッサージ

PROM

ジェットバス (ハイドロセラピー)

   
3日毎

2回/W

2回/W
6週目から1日3回、1回10分程度のカートセラピーも実施した。


【経過】

 手術から4週間目までは姿勢反応には変化が認められないものの、2秒間ほど起立姿勢をとることができるようになった。5週目にはナックリングのままではあるが10秒間起立姿勢をとることができるようになった。8週目には時々歩行が可能となった。9週目になると起立姿勢を維持し、歩行可能となった。12週目には介護、カートなしでも歩行することができるようになった。神経学的検査は(姿勢反応)以下のとおりである。

姿勢反応)

 

8週目

12週目

LR

RR

LR

RR

固有位置感覚  knuckling

1

0

2

1

踏み直り反応  触覚性
        視覚性

1

0

1

1

1

0

1

1

跳び直り反応

1

0

2

2


【考察】

 椎体骨折/脱臼は椎骨による支持組織の障害によって脊髄の圧迫が起こり、神経障害が引き起こされる疾患で 、50-60%は第11胸椎から第6腰椎に発生し、原因の多くは外傷(交通事故等)によって惹き起こされる。その治療は、脊柱の支持機能の解剖学的整復と神経機能の改善の2本の柱からなる。前者は手術等の外科治療であり、後者はリハビリテーションによりその目的を達成させることになる。
 そこで今回は、従来本院で椎間板ヘルニアの術後リハビリテーションプログラムに加えて、カートセラピーを追加することでリハビリテーションを試みた。カートセラピーは、不全麻痺、関節炎など障害を持った犬に使用される車椅子を用い、自重の負荷をカートによって支えることで、筋力の低下した状態でも能動的な筋運動を行なえるメリットがある。今回の症例においてはカートを使用することによって、まだ起立維持が困難な時点から能動的な後肢の運動を促進することが可能となった。能動的な後肢の運動は、筋力の維持・増強に効果が期待される。今後も症例を選んで使用していきたい。

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