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やどり木カンファレンス
高齢猫の慢性化膿性顎骨骨髄炎
2007年7月
徳留史子
【はじめに】
今回、歯科疾患と関連すると思われる開放創を頬部に持った猫で、骨髄炎をきたし、形成された腐骨の存在下で洞管より漿液の排泄が続いたため、原因歯の残根除去、抗生物質の長期投与と腐骨除去を組み合わせた治療を行った症例について考察した。
*洞管とは、厚い線維性の不良肉芽組織で縁取られた管状の潰瘍のことであり、縫合糸、外科用インプラントなどの異物や腐骨(血行障害あるいは感染症により骨の一部が壊死に陥り、膿や肉芽組織によって健康な骨から分離された壊死骨組織)に関連して形成され、皮膚表面に治癒しない小孔として存在し、浸出液の排出が継続する。
【症例】
雑種猫、メス、14歳、室内飼育
数週間前に顎の下が腫れて排液、その後頬に穴が開いたとの主訴で、紹介病院で3日間治療した後に来院。
初診時の問題点は、外貌、臭気、一般状態の不良(中程度低アルブミン血症、BCS1、脱水、低体温)膿を飲み込むことにより起こる喘鳴であった。
【治療および経過】
自宅での飼育可能な審美的許容範囲まで皮膚欠損部位の状態を改善すること、及び一般状態の改善を目的として治療を開始した。
5日間に及ぶ全身性抗生物質投与による感染除去、物理的デブリードマンの後も肉芽形成が見られず、骨露出範囲の広がりが見られたため、全身麻酔下にて原因の除去(残根除去)と創閉鎖を試みた。
その後、順調に一般状態の改善が認められたが、創部の一点から漿液の排泄が続き、洞管を形成していると判断、再び、麻酔下で腐骨除去を行った。
メトロニダゾール、エンロフロキサシンの内服を長期的に行い、創の治癒、全身状態の改善へ向かった。
【考察】
歯牙疾患を原因とした骨髄炎は、本症例のように、原因療法(抜歯など)薬物療法(全身性抗生物質の投与、3か月程度の長期投与が必要となることがある。)、局所洗浄療法、手術療法(病巣掻爬、腐骨摘出、壊死骨切除)を組み合わせた治療が必要となることが多い。
しかし、レントゲン上での骨の破壊性変化の発現には10日ほどかかり、腐骨が確認できるのは20日後である。
猫の頬に歯牙疾患と関連して「穴が開く」ことは老齢の猫で時々見かけるが、初診時で骨髄炎の所見が得られていなくても、念頭に置いた薬物療法を行うことが必要である。これと平行して、原因の除去と、必要に応じ外科療法を行う。特に皮質骨が露出した創では、一般的に肉芽が形成され難い。手術により早期に閉鎖する、もしくはハイドロジェル等を用いて乾燥、空気との接触を防ぎつつ肉芽形成を促すことが必要である。
この様な病態を呈する猫の多くは高齢であり、腎不全や他の全身性疾患に罹患している可能性の高いことや、長期に及ぶ慢性炎症のために中程度以上の低アルブミン血症を呈することが外科治療を困難にする要因であるが、手術療法も組み入れた積極的な治療により良好な予後が得られると認識した。
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