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やどり木カンファレンス

亜鉛中毒を疑った猫の1例

2007年7月

高木勝久

【はじめに】
亜鉛中毒とは、亜鉛を含んだ物体の接種による中毒であり、重篤な血管内溶血及び消化管刺激の原因となり、多臓器不全を引き起こす。場合によっては、DIC及び心肺停止も起こりえ、急性腎不全が重大な続発症となる。診断は稟告、臨床症状及び血清亜鉛濃度で行う。
多くの症例報告は米国に於けるペニー硬貨摂取による報告であり、猫に於ける報告は見受けられない。

【症例】
雑種猫、2歳1ヶ月齢、去勢雄、ワクチン接種済。
頻回の嘔吐を主訴に来院。

【一般身体検査所見】
体重6.45kg、体温39.6℃、元気食欲低下、軽度脱水

【初診時臨床検査所見】

  1. 血液検査:PCV、WBC、Creの上昇
  2. 尿検査所見:異常無し
  3. 超音波検査所見:異常無し

【治療経過】
初診時、発熱、嘔吐に対し、アモキシシリン、ラニチジン及び乳酸リンゲル液にて治療する。第4病日に於いて状態の改善が見られると同時に、ヒト用の亜鉛サプリメント摂取していた事が発覚する。稟告及び血液化学検査所見により、亜鉛による急性胃腸炎及び、急性腎不全を疑い、点滴治療の通院を指示する。その後、第14病日に於ける血液検査でさらなるCre及びBUNの上昇が認められた。

【考察】
ラットにおける亜鉛の投与実験に於いて、各臓器の亜鉛量が正常範囲に戻るまで3週間かかったとの報告があり、腎臓は不可逆的な障害が起きていなくとも、3週間は続く可能性がある。今回、治療を行ったにも関わらず、Cre及びBUNが上昇した背景にはこのような理由があるかもしれない。
また、亜鉛中毒の犬において顕著に見られる貧血が認められなかった。これは、種・個体による感受性の違い等もあるかもしれないが、今後、猫に於ける亜鉛中毒がどのような症状を示しやすいのか、検討していく必要がある。
今回の症例では稟告及び症状から亜鉛中毒を推測したにしか過ぎない。摂取がわかった時点で、亜鉛血中濃度の測定を行っていれば、確実な診断の一助になった可能性ある。また、確実に診断が分かった上で、キレート剤等を用いた特異的治療が行えていれば、腎臓への負荷を軽減できた可能性もある。

 

犬猫に有害なサプリメント

【はじめに】
健康ブームの最中、サプリメントがここ数年で非常に普及してきている。サプリメントの中には犬猫にとって有害なものも少なくない。予め、有害なサプリメントを獣医師が認知している事が必要とされる。

【ビタミンA中毒】

  1. 種:猫
  2. 骨膜及び軟骨内の骨形成を抑制し、その結果、骨格に異栄養性Ca沈着を起こす。
  3. 通常はレバーの常食で発症する。肝油などもビタミンAが豊富である。
  4. 症状
  5. 跛行
  6. カンガルー様の着座姿勢
  7. 頚部、前肢領域に於ける過敏症、硬直
  8. 長骨成長遅延(幼若動物)   etc.
  9. X線所見
  10. 膝蓋骨下に石灰化(最も初期に認められる)
  11. 頚椎と胸椎に広範な外骨症(強直性骨化過剰症)
  12. 骨粗鬆症   etc.
  13. 治療
  14. 食物からの過剰ビタミンAの除去
  15. 鎮痛薬

※骨性の関節固定は不可逆的

【ビタミンD中毒】

  1. 種:犬,猫
  2. Caの腸管での吸収、腎臓での再吸収、骨の再吸収の増大等より、高Ca血症や異栄養性Ca沈着を起こす。
  3. ビタミンD(1~2週間、2000-4000IU/kg)で発症
    急性中毒量不明
    殺鼠剤にも含まれるものがある
  4. 症状:嘔吐,下痢,多飲多尿,不整脈etc.
  5. 検査所見:高P血症,高Ca血症(12-24hr以内),低張尿etc.
  6. 治療
  7. 一過性の摂取でも25000IU/kg以下なら治療は必要無い
  8. 催吐処置
  9. 吸着剤:活性炭(生理食塩水にて10倍希釈)
  10. 浸透圧下剤:硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウム
  11. 輸液
  12. フロセミド(高Ca血症時)
  13. プレドニゾロン(高Ca血症時):腸管,尿細管に於けるCa吸収抑制作用

【α-リポ酸】

  1. 種:猫(ヒトや犬の10倍の毒性)
  2. 肝細胞毒性が強く、強力な抗酸化作用を持つ。
  3. 最大耐量:30mg/kg以下
  4. 症状:流涎,易刺激性,運動失調,食欲不振etc.
  5. 治療:特異的な治療法の報告なし

【鉄中毒】

  • 種:犬・猫
  • トランスフェリンの結合能力を超えた量の鉄は遊離鉄として、血漿中に存在する。遊離鉄は強力な酸化剤として作用。
  • 症状:胃腸粘膜障害、肝障害,心臓血管虚脱,ショックetc.
  • 中程度の毒性:20-60mg/kg,強い毒性:60mg/kg~,致死量:200mg/kg~
  • 検査所見:血清総鉄量が正常値の1.5~2倍、肝酵素やBil等の上昇、ヘモグロビン尿etc.
  • 治療:キレート剤:酸化マグネシウム(経口投与),デフェロキサミン(非経口投与)
  • 排泄促進:アスコルビン酸(デフェロキサミンと併用)
  • 輸液:ショック,脱水,アシドーシスの支持
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