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やどり木カンファレンス

当院におけるトリロスタンの犬下垂体性副腎皮質機能亢進症(PDH)への使用状況と今後の検討課題

2007年4月

山口恭寛

【はじめに】

当院におけるPDH症例へのトリロスタンの使用はSID投与が主流である。しかし、最近の研究ではトリロスタンをBIDで投与することで臨床症状の改善、維持量の低減、生存期間中央値の延長などが得られることが示唆されている。また、当院においてトリロスタンをSIDで使用しているPDH症例のなかには、ACTH刺激試験によって良好な値が得られているにもかかわらず、臨床症状の改善が乏しい症例も経験している。そこで、今回当院においてPDHをトリロスタンSID投与によってコントロールを試みている3例と文献を比較・評価することによって、トリロスタンBID投与の妥当性について検討した。

【症例】

症例1:マルチーズ 10歳齢メス 
合併症として糖尿病を持っている。現在のトリロスタン維持量は8.5mg/kgSID。最近のACTH刺激試験ではコルチゾール(pre)が<0.5μg/dl、コルチゾール(post)が1.0μg/dlであり、現在PDHの臨床症状はない。

症例2:マルチーズ 10歳齢オス 
合併症として糖尿病とアカラス症を持っている。現在のトリロスタン維持量は8.6mg/kgSID。最近のACTH刺激試験ではコルチゾール(pre)が6.3μg/dl、コルチゾール(post)が7.9μg/dlであり、現在PDHの臨床症状はない。

症例3:M.ダックスフント 11歳齢メス 
合併症として甲状腺機能低下症を持っている。現在のトリロスタン維持量は9.2mg/kgSID。最近のACTH刺激試験ではコルチゾール(pre)が0.8μg/dl、コルチゾール(post)が2.4μg/dlであり、現在PDHの臨床症状は、多飲多尿および体幹の脱毛がある。

【結果】

当院におけるトリロスタン平均維持量と文献との比較

当院:8.7mg/kgSID

文献:SID: 16.7mg/kgSID
11.4mg/kgSID
6.5mg/kgSID

BID:  3.2mg/kg BID (6.4mg/kg/day)

【考察】

トリロスタンの薬効は投与後の数時間しか持続しないことが確かめられている。

症例2ではACTH刺激試験においてコルチゾールpost値が7.9μg/dlとやや高値を示すものの、PDHによる臨床症状はみられていない。ところが、症例3ではコルチゾールpost値が2.4μg/dlと良好な値が得られているにもかかわらず、PDHによる臨床症状が顕在化している。このことは、症例3においてはトリロスタンSID投与では血中のコルチゾール濃度が抑えられない時間が長いことが考えられるのではないだろうか。こうした症例はすでにACTH刺激試験で低値を示していることからSIDのまま投与量を増量することは、アジソン兆候を招きかねない。よって、こうした場合、BID投与を積極的に考慮すべきではないだろうか。

現在トリロスタンBID投与によるPDHコントロールの報告数はまだ少ないが、その薬効動態や上記症例3などのケースに遭遇することから、今後トリロスタンBID投与によるPDH管理は当院においても積極的に導入していくべきと考えられた。

 


 

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