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やどり木カンファレンス

片側椎弓切除術および造窓術を行った椎間板ヘルニアの1例

2007年2月

北原裕子 岡田みどり 片山由香里

【はじめに】

神経学的検査にてグレード3と診断された胸腰部椎間板疾患に減圧術を行った場合93%、造窓術単独を行った場合85%の治療成績が得られているという報告がある。造窓術単独では減圧術を行うより治療成績が怠るが、減圧術と組み合わせて行うことにより、更なる脱出の防止につながるとされている。さらに、減圧術の一種である片側椎弓切除術を行った場合、そのまま線維輪まで掘り下げて背外側および側方からアプローチが行えるため、造窓術を組み合わせることは容易である。しかしながら予防的造窓術を正当化するほど頻度は高くない。そこで今回、グレード3の胸腰椎椎間板ヘルニアの症例に片側椎弓切除術と造窓術の併用を行ったので報告する。

【症例】

ミニチュアダックスフント、3歳齢の未避妊雌。
1週間前より元気消失、震えが認められるとのことで来院。この時、神経学的検査にて椎間板ヘルニアを疑わせる所見は認められなかった。しかし翌日、夜より後肢がもつれ、来院した際には固有位置感覚の低下・消失が認められた。

【経過】

固有位置感覚の低下が認められた第2病日からステロイドの連日投与を行った。しかしながら、内科的治療の反応は乏しく、第5病日にMRI画像診断を行った。また、深部痛覚はあり、ふらつきながらも歩行は可能で、さらに自力排尿も行えたため、神経学的グレード3に該当した。

【MRI画像検査】
胸腰椎MRI検査では、矢状断像にてT11からL2の椎間板に線維輪の肥厚が、さらに、T13、L1間においては腹側からの圧迫が認められた(図1)。同部位の横断画像ではT1、T2強調画像で低信号の病変が認められ、腹側正中やや右側より椎間板の圧迫が確認された(図2)。

【手術】

画像診断をうけ、手術は2日後(第7病日)に実施。まずは明らかな椎間板の逸脱が認められたT13、L1間において、今回はやや右側に病変が認められため、右側から片側椎弓切除術を行った。さらに同部位と、T12、T13間に造窓術を行った。

【理学療法】

術後は動物が耐えられるようになればできるだけ早期に理学療法を行う。目的は後肢の筋肉を強化することによって機能の回復を促進し、それを使用させることである。今回の症例では、術後1日目から寒冷治療、表在部温熱療法、深部温熱療法(レーザー治療)、マッサージ、およびジェットバスを順次スケジュールを立てて実施した。

【結果】

術後10日目(第17病日)に左後肢の跳び直り反応が回復し始め、ふらつきながらの歩行も可能となった。術後12日目(第19病日)には左後肢の固有位置感覚が回復し始めた。さらに、術後21日目(第28病日)には右後肢の跳び直り反応が、術後52日目(第59病日)には両後肢固有位置感覚、跳び直り反応とも回復傾向である。

【考察】

予防的造窓術は、片側椎弓切除術から少し掘り下げて行えるため、さほど時間がかからない。ある報告では、減圧術単独では10%の症例で再手術を行い、隣接する椎間板に予防的造窓術を実施した場合では4%であった。今回の症例のように病変部を含めた前後の椎間板に線維輪の肥厚が認められ、今後椎間板ヘルニアが起こる可能性が高い部位の予防、および一度椎間板物質が脱出した部位の再発防止に行うだけの価値があると思われる。ただし、片側椎弓切除術では圧迫位置が正確に把握されている必要があるため、MRI、CTなどの画像診断は必要最低条件となる。さらに、造窓術の効果は除去した髄核の量によって決定するので、多くの髄核を除去するべきだが、椎間板の背側には脊髄、腹側には大動脈のような傷つきやすい組織が近接しているので、切開および椎間板物質除去の際には注意しなければならない。
今回の症例の場合、術後52日目でほぼ両後肢を使用しているため、早期に片側椎弓切除術を行ったことは大変有効であったと考える。しかしながら、手術から日が浅いため、造窓術による予防効果は今後の経過を追う必要がある。


図1(MRI矢状断、矢印はT13)

図2(MRI横断面、丸内神経の圧迫)

 


 

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