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動臨研カンファレンス

肝外胆管閉塞の猫の1例  2006年9月

窪田出、阪口貴彦、池谷大輔、山村穂積(Pet Clinic アニホス)

〔概要〕

14歳、去勢雄、雑種猫が慢性の食欲不振、嘔吐、体重減少などを主訴に来院した。各検査において肝胆道系疾患を疑い試験開腹手術を行ったところ、総胆管十二指腸開口部における閉塞性病変と重度の総胆管拡張、および膵臓腫瘤を確認した。術式は総胆管開口部閉塞性病変切除後、総胆管十二指腸側端吻合術を選択し、同時に膵臓腫瘤摘出を行った。術後しばらくは食欲不振や嘔吐などを繰り返したため積極的な支持治療、抗生物質療法などを行ったが、顕著な良化は認められなかった。しかし、術後4か月目からのステロイド療法に奏功し、現在(初診から15か月)まで非常に良好に経過している。

〔症例〕

雑種猫、14歳齢、去勢雄、ワクチン未接種、FeLV(-)、FIV(-)
長期の食欲不振、嘔吐、体重減少を主訴に来院した

〔一般身体検査所見〕

体重4.14kg、体温39.2℃、可視粘膜黄色化、軽度の脱水および削痩、上腹部にφ2㎝大の腫瘤触知

〔臨床検査所見〕

血液検査:ALT、AST、ALP、γ-GTP、TBA、T-BIL、T-CHOの上昇
X線検査:肝臓領域の不整陰影
超音波検査:右側肝臓実質内の混合エコーパターン、胆嚢内高エコー

〔試験開腹手術〕

肝胆道系疾患を疑い第11病日に試験開腹手術を実施した。
・手術所見:総胆管および胆嚢の重度拡張、総胆管十二指腸開口部の閉塞性病変、膵臓腫瘤病変を確認
・手術法:胆泥除去後、総胆管十二指腸開口部の閉塞性病変の切除を行った。切断した総胆管断端径が、総胆管十二指腸側端吻合術に耐えると判断したため、胆汁流出路の迂回にはこの術式を採用した。同時に膵臓腫瘤摘出(膵臓右葉の部分切除)を行った。

〔病理検査〕

膵臓外分泌腺癌とその胆管転移

〔経過① 第12病日〜第26病日〕

術後しばらくは入院下で静脈点滴、抗生物質(アスポキシシリン)、ラニチジン、ヘパリンを使用した。術後3日目(第15病日)から流動食を給餌した。間欠的嘔吐が認められていたが第26病日に退院とした

〔経過② 第26病日〜術後148病日〕

慢性的な嘔吐および胆管肝炎の予防としてメトロニダゾール、ウルソ、ラニチジン、メトクロプラミド、処方食(l/d)を処方した。しかし、この間三度深刻な嘔吐と食欲不振に陥り、入院下で積極的な支持治療をおこなった。また、この間は血液検査上の良化も認められなかった。

〔経過③ 術後148病日〜現在〕

慢性胆管肝炎の治療としてプレドニゾロン1mg/kg sidで併用を開始した。プレドニゾロン使用後は深刻な嘔吐や食欲不振に陥ることは一度もなく、一般状態および血液検査において著しい良化を認めた。現在はプレドニゾロン0.5mg/kg eodで使用しており良好な経過を示している。(453病日)

〔まとめと考察〕

 本症例の肝外胆管閉塞(以下EHBO)の原因は病理検査の結果、悪性腫瘍(膵臓癌)であった。過去の報告では、猫のEHBOにおいて原因が悪性腫瘍の場合は死亡率100%であり、予後不良とされている。一般的にはEHBOの有無にかかわらず膵臓癌や胆管癌の予後は非常に悪く、診断時に転移を起こしていることも多いとされている。本症例の経過は非常に良好で、病理検査の再検討が必要と考える(現在検討中)。
 本症例はステロイド使用後に劇的に症状の改善が認められた。手術時の肝バイオプシーでは特異的所見(免疫介在性疾患を示唆する所見など)は認められなかったため、しばらくはステロイドを用いなかったが、長期の抗生物質療法の反応が乏しい症例では、ステロイド治療の反応をみることも一つの方法と思われた。
 胆汁流出路の迂回に選択される手術法は、胆嚢~腸管吻合術が一般的である。本例で用いた総胆管十二指腸吻合術は人医学ではしばしば行われるとされているが、小動物領域で用いられることはほとんどない。本例では総胆管は重度拡張しており、吻合直径を十分確保することが可能であったため本法を用いた。手技は他の手術に比較して安易であるし、総胆管が十分拡張している症例では手術経過は良好であると思われ、本手術法の適応例や予後について新たな検討をする価値があるのではないかと考えた。


 

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