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動臨研カンファレンス

IFN‐γで治療を行った犬アトピー性皮膚炎の2症例  2006年2月

北原裕子 岡田かおり 橋本志津 山村穂積 (Pet Clinic アニホス)

 

〔はじめに〕

 生態防御機構において、B細胞からのIgE産生を促進するTh2細胞は、細胞性免疫応答を促進するTh1細胞とバランスをとりながら、重要な役割を担っている。

 アトピー性皮膚炎の犬では正常な犬に比べるとTh2細胞の方が、Th1細胞より優位になっていることが報告され、犬アトピー性皮膚炎の症状改善にTh1/Th2のサイトカインバランスが重要な役割を果たしていると考えられている。

 そこで、最近アトピー性皮膚炎の症状緩和薬としてインターフェロンγ製剤が加わり、注目されている。東レ株式会社から発売されたリコンビナントイヌインターフェロンγ「インタードッグ」は1日1回週3回隔日皮下投与を4週間、その後は症例の状態に応じて、獣医師の判断により4週間投与を行う。この投与方法で4週間の治療後、72%の犬に痒みの改善が認められたという報告がある。しかしながら、臨床の現場では4週間、1日おきに毎回飼い主に来院してもらうことが困難であり、また、ステロイドの切れない症例が多いため、インタードッグが間隔を開けて、しかもステロイドと併用しても使用可能かと思い今回の試験を行った。

〔投与方法〕

 Willemseの診断基準でアトピーと診断された犬を対象に、犬インタードッグ1万単位/㎏を、1日1回、週1回皮下投与した。また、ステロイドを使用していた症例に対して、インタードッグ投与前と同量でのステロイド併用投与を行った。また、合併症、併発疾患のある場合、その都度必要な治療薬の投与を行った。投与期間、投与間隔に関しては、症例の状態に応じて獣医師の判断により決定した。

〔評価基準〕

  前回投与から次の投与までの期間、掻痒と、掻破痕、紅斑、脱毛などの皮膚症状をスコア化して評価した。掻痒は0~5の6段階を飼い主から聴取した。皮膚症状の評価は掻破痕、紅斑、脱毛に関して、顔面、耳介、腋窩、腹部、鼠径、肢端それぞれの部位ごとに0~5の6段階評価を獣医師が行い、合計したものを重症度スコアとした。

〔症例〕

 症例1は避妊雌、9歳の柴犬。初発年齢は1歳。通年性の皮膚炎による、ステロイド反応性の痒みに悩まされていた。IgE抗体検査(日立化成)では、ハウスダストマイト(チリダニ)、ストレージマイト(貯蔵庫ダニ)が強陽性、ノミ唾液、マラセチアが陽性でした。

 インタードッグの投与は、以前より投与していたセファレキシン、イトラコナゾール、プレドニゾロンの用量を変更せずに開始した。投与間隔は、8週目まで1週間に1回、その後症状の改善が認められたため、2週間に1回と間隔を開けた。現在も投与中。週1回投与8週間で掻破痕、紅斑、脱毛のスコアがなだらかに減少し、臨床所見として皮膚症状が緩和された。15週目に再発性の膀胱炎所見が認められたこと、以前より認められていた頚部腫瘤からの血膿の排出のため、15週目以降にステロイドを休薬。16週目に頚部腫瘤の切除を行った。ステロイドを休薬してからも、急激に悪化することはなく、全体的にステロイド併用中と変わらない状態で維持されている(グラフ1)。血液検査上では、ステロイド内服中肝臓への負担があったが、ステロイドを休薬してから回復し、インタードックによる影響は認められなかった。

 症例2は雄、10歳のウエストハイランド・ホワイトテリア。2歳から通年性のステロイド反応性皮膚炎に悩まされ、ステロイドを休薬することができなかった。IgE抗体検査(日立化成)では、ハウスダストマイト(チリダニ)、マラセチアに陽性、ストレージマイト(貯蔵庫ダニ)に弱陽性だった。インタードッグの投与は、以前より投与していたセファレキシン、イトラコナゾール、プレドニゾロンの用量を変更せずに開始した。投与間隔は、9週目まで1週間に1回、その後症状の改善が認められたため、9週目以降は2週間に1回と間隔を開た。現在も投与中。週1回投与9週間投与により、掻破痕、紅斑、脱毛のスコアが減少、臨床所見において皮膚症状が緩和した。9週目までで症状がやや改善したことや、ALPの増加などのため、なかなか休薬できなかったステロイドを、11週目から漸減、13週目以降休薬し、17週目以降はイトラコナゾール、ステロイドを休薬することができたので、以前より認められていた陰嚢ヘルニアの手術を18週目以降に実施し、同時に去勢も行った。ステロイド休薬直後は一時的に皮膚症状、掻痒とも悪化したが、17週目以降落ち着いてきた。以降ステロイドは再開していないが、症状は悪化することなく維持している。これはIFN‐γの継続投与による症状の改善と考えた(グラフ2)。血液生化学では、8週目でALPが1万を超える高値を示した。皮膚症状が悪く、なかなかステロイドを切ることができませんでしたがインタードッグによる治療を行い、8週目で症状の改善傾向が認められ、11週目以降漸減、13週目以降休薬することによりALPの値は低下している。その他、血液検査上、特異所見は認められなかった。

〔まとめ〕

 症例1、症例2共にIFN‐γ週1回、ステロイドとの併用による約2ヵ月間投与により、脱毛、紅斑などの改善が認められた。その後、2週間に1回の間隔で継続投与にしてから、やむ終えない事情でのステロイドの休薬により、一時的な皮膚症状の悪化が認められるも、現在では発毛傾向、掻痒のコントロールができ、ステロイドを使用せずに維持しています。

 両症例共、IFN‐γの16回以上の長期投与、ステロイドとの併用を行いましたが、IFN‐γ投与による一般状態および血液検査への影響は認められなかった。

〔考察〕

 通常投与では1日おき4週間投与、つまり12回投与により症状が改善されたか判断するが、1週間に1回の間隔で2ヶ月間、約8回の投与により症状の改善が認められたため、1週間おき2ヶ月間投与へ変更しても、本来のプロトコールと同程度の効果が得られ、症状の改善には投与回数が重要なのではないか、と思われた。

 その為、1日おきの来院が難しいが1週間に1度なら、という症例にも有効であると思われる。しかしながら、投与間隔を空けた分、症状の改善も緩徐であるため、IFN‐γでの治療に際し、アトピー性皮膚炎について飼い主に十分理解してもらうことが重要であるのではないかと考えられた。

 以上の事より、10回前後の投与により症状に変化が認められた場合は、その症例にはIFN‐γ投与が有効と考え、その後継続投与により皮膚症状が改善されると考えられる。

 また、今回はステロイドの併用がALPへの影響、易感染性などの問題により中断せざるを得なくなってしまったが、今までステロイドを休薬することができなかった症例において、インタードッグを使用することによりステロイドの再開が必要とされていないため、インタードッグにより症状の改善が認められた症例にとってはステロイドによる肝臓などへの負担を軽減することが可能であると考えられた。


 

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