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動臨研カンファレンス 褐色細胞腫が疑われた犬の1例 2005年5月 重山純子 阪口貴彦 山村穂積(Pet Clinic アニホス) 【症例】シーズー 6歳齢 去勢雄 【主訴】2週間前からの食欲不振、1週間前からの嘔吐・下痢 【初診時身体一般検査所見】体重6.78kg 心雑音(+) 腹部に硬結した腫瘤を触知 【初診時血液検査所見】 成熟好中球主体の白血球増加(23000/μl) 【初診時X線検査所見】腹部に腎臓大の腫瘤の陰影を認めた 【初診時腹部超音波検査所見】 両側腎盂に極度の拡張があり、水腎の所見を呈していた。右腎では腫瘤の腹側に拡張した尿管を認めた(図1)。
【消化管造影検査所見】 造影剤の通過障害は認めなかった。腫瘤によって消化管がラテラル像では下方に、VD像では辺縁に押しやられていることより、腫瘤は後腹膜腔内のほぼ正中に存在すると判断した。以上のことより後腹膜腔内に存在する腫瘍が両側の尿管を腹側へ圧迫し、水腎症を起こしていることが示唆されたため、第2病日試験開腹とした。 【試験的開腹】 腹部正中切開を行なった。腫瘤は後腹膜腔の正中よりやや右側、腎臓よりも尾側に存在し、その表面に左右の尿管が癒着し、V字に折れていた。後大静脈の腹側に腫瘤が癒着しており、一部は後大静脈内に浸潤していたため摘出は困難と考え、左右の尿管を腫瘍から剥離し、減圧することで水腎の緩和を試みた。 尿管を腫瘍から剥離したところ、腎臓付近で拡張していた尿管がほぼ一定の太さに戻り、また水腎で緊張していた腎臓も閉腹時には軟らかくなっていた。肝臓への転移も認められた。 【病理組織診断】 好酸性顆粒状~空胞状の細胞質を有する小型の円形細胞が増殖していること、核の大小不同はあったが異型はなく、核分裂像も観察されなかったこと、神経内分泌細胞で陽性となるグリメリウス染色が陽性であったことより神経内分泌細胞腫瘍と診断された。 【経過】 術後1日目、頻回の嘔吐と下痢を認めた。午前中34.8度であった体温が午後9時には40.5度まで上昇していた。 術後2日目、体温は39.8度で白血球数の術前以上の増加(30600/μl)と血小板数の減少(68000/μl)を認めた。皮膚の紫斑や可視粘膜に点状出血は認めなかったが手術後であることを考慮し凝固系の測定を行なったところAPTT(10.2秒)、PT(75秒以上)の延長が認められた。FDP測定キットを使用したところFDPが5μl/ml以上10μl/ml以下で陽性であったためDICの可能性が強いと判断し、ヘパリンの投与とメシル酸ナファモスタットの投与を開始した。術後3日目に腹部に紫斑を認めた。術後4日目腹部の紫斑は広がり、口腔粘膜に点状出血が認められ、死の転帰を遂げた 【術後検査所見】 血液検査:白血球数、血小板数に対する治療の反応は乏しく、死亡時には貧血も呈していたが腎臓の数値には改善が認められていた(死亡時:BUN 83mg/dl, Cre 3.96mg/dl, P 10.2mg/dl)。 超音波検査:術後1日目、左右両腎ともに水腎の緩和を認めた(図2)。
【神経内分泌細胞とは】 内分泌細胞と神経細胞の機能を併せ持っている細胞で下垂体、副甲状腺、副腎髄質、膵島等のような臓器・集塊を形成する細胞のほかに気道、消化管、胆道、尿道粘膜、皮膚、子宮頸部、前立腺のように他の上皮細胞に介在して散在性、孤立性に分布する細胞が含まれる。腫瘍細胞が各種のホルモンを産生する場合が多く、下痢などの消化器症状を発現する。 【考察】 本症例では腫瘍が後腹膜腔に存在していたことより神経内分泌腫瘍の中でも副腎髄質由来の腫瘍(褐色細胞腫・クロム親和性細胞腫)の可能性が最も強いと考えられた。また、解剖学的な位置より副腎髄質ではなく副腎外性であると思われた。 褐色細胞腫は犬猫では稀で、剖検時や試験開腹時に偶然発見されることが多い腫瘍である。通常は副腎髄質より発生するが副腎外クロム親和性細胞腫の発生も報告されている。カテコールアミン(E,NE)の過剰分泌が起こるため心臓に悪影響を及ぼし、発作性全身性高血圧や収縮期性雑音、不整脈などを発現させたり、後大静脈への浸潤に伴う血流障害による2次的な症状、そのほか非特異的な症状を示すことが多いといわれている。 【まとめ】 本症例の臨床症状は腫瘍本来の病態ではなく、腫瘍の尿管圧迫によって生じた腎不全によるものと思われた。術後DICを生じたため、腫瘍に対する内科的治療は行なえなかった。術後腎臓の形態や血液検査の数値に改善がみられていること、腫瘍に伴う臨床症状が顕著に認められなかったことより、死因は続発性に生じたDICである可能性が強いと考えている。本症例の臨床症状は腫瘍本来の病態ではなく、腫瘍の尿管圧迫によって生じた腎不全によるものと思われた。術後DICを生じたため、腫瘍に対する内科的治療は行なえなかった。 術後腎臓の形態や血液検査の数値に改善がみられていること、腫瘍に伴う臨床症状が顕著に認められなかったことより、死因は続発性に生じたDICである可能性が強いと考えている。MRI検査所見(T2強調矢状断像):1回目のMRI検査と比較すると、頚部脊髄においてかなり高信号を示していた部分がなくなってきていた。 |
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