» 医局員名簿
 ┣ 医局獣医師名簿
 ┗ 医局動物看護師名簿

» 研修室
 ┣ 学会誌
 ┣ 各学会・年次大会
 ┣ 小動物専門誌
 ┣ カンファレンス
 ┗ 個人・その他

» 院内日誌

» ペット栄養学教室

» パピークラブ

 

 

 

動臨研カンファレンス

呼吸困難を呈した猫の1例 2005年3月

阪口貴彦、山村穂積、北川動物病院(東京都)

 今回我々は、急速な状態の悪化を伴った呼吸困難の猫に遭遇し、その診断・治療と同様症例の回顧的報告との比較により若干の知見を得たので報告する。

【症例】

 1週間前に他院での膀胱炎治療歴のある室内飼育の日本猫(6歳、去勢雄)で、昨日から元気消失、食欲低下し、本日になって食欲廃絶、呼吸が荒くなったとのことで来院した。

【一般身体検査所見】

 体重6kg(BCSスコア4)、体温33.2℃、心拍数120回/分、沈鬱であり、聴診により左右肺ともに湿性ラ音聴取された。触診では疼痛なく、股動脈拍動も触知可能であった。

【各種検査所見】

 胸部レントゲン検査と血液・生化学検査を行った。心臓の超音波検査を試みるが呼吸速迫のため明確な所見が得られなかった。

● 胸部レントゲン検査所見
Lat像において肺前葉を中心にレントゲン不透過性が亢進し、エアーブロンコグラムが確認され、若干の胸水も認められた。また著明な心陰影の拡大は見られず、後葉の異常所見は軽度であった。DV像では肺前葉を中心にレントゲン不透過性が亢進し、心陰影が不明瞭となっていた。またLat像と同様に後葉の異常所見は軽度であった。

● 血液・生化学検査所見
好中球主体の白血球増多、CK、LDH、TG値の上昇、ALBの低下が認められた。

【治療・経過】

各種検査所見から肺炎や心疾患等を疑い、酸素吸入と保温、抗生物質アスポキシシリンの点滴静注フロセミドの投与を行った。しかし、呼吸状態や低体温は改善せず、胸水貯留が増加し治療開始から30時間後に死亡した。

【病理組織学的検査所見】

死後、胸腔内の剖検を行い心臓・肺の病理検査を行った。心臓では左室心筋線維に錯綜配列が認められ、肺においては動脈内腔に血栓形成が認められた。よって肥大型心筋症と肺動脈塞栓症と診断された。

【考察】

本症例の呼吸困難の原因は肺動脈塞栓症であったと推察される。肺動脈塞栓症は生前の診断が難しい疾患のため、今回の各検査所見を猫における肺動脈塞栓症の回顧的報告と比較して検討してみたところ、回顧的報告1)中の症例50%に認められる異常所見(食欲廃絶、呼吸速迫、沈鬱、胸水、肺血管陰影の異常、好中球増多、BUN、T-Bil上昇の8項目)の5項目を満たしており、十分に鑑別診断すべき疾患であることがわかった。一方、肺動脈塞栓症の誘因は心疾患、腫瘍、DIC、蛋白漏出性腎症・腸症、IMHA、敗血症、膵炎、肝リピドーシス、FIPなどが挙げられている1)2)。今回の症例では肥大型心筋症が認められたことで、肥大型心筋症が肺動脈塞栓症の原因となったとすれば両心室不全・右心不全があったものと思われる。また、DICに対する凝固系検査も同時に実施すべきであったと思われた。

(参考文献)

  1. JAVMA,Vol215,No.11,1999
  2. J Vet Intern Med,18(4),2004
胸部レントゲン検査(Lat像、DV像)

血液・生化学検査所見
RBC 868×104 /μ? MCV 563 fl
WBC 19800/μ? MCH 197 pg
Hb 171 g/dl MCHC 350 g/dl
Ht 48.90% PLT 369×104 /μ?
TP 7.1g/dl TG 359mg/dl
Alb 2.8g/dl T-cho 118mg/dl
CK 1077IU/L Na 153mEq/L
BUN 23IU/L K 4.3mEq/L
ALT 45IU/L Cl 111mEq/L
LDH 787IU/L Mg 2.5mg/dl
ALP 57IU/L Ca 9.5mg/dl
γーGTP 1IU/L IP 4.2mg/dl
CRE 1.25mg/dl T-bil 0.1mg/dl

 


 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED