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動臨研カンファレンス

皮脂腺炎に多型紅斑を併発した犬の1例 2005年2月

岡田かおり1,2) 弓削田直子1) 三枝早苗1) 藪添敦史2) 関口麻衣子2) 岩崎利郎2) 山村穂積1)
1)北川動物病院 2)東京農工大学獣医内科

【はじめに】

 多型紅斑とは、薬剤、感染、食物などの誘因により皮膚や粘膜に発症する急性反応で、弓形、多環、ターゲット状様の特徴的な紅斑が認められる。一方、皮脂腺炎は秋田犬やスタンダードプードルに好発する、皮脂腺をターゲットとした非感染性の炎症性疾患で、乾性の落屑、著しい毛胞性鱗屑、二次的な脱毛を特徴とする。今回我々はこの2つの疾患を併発し、診断が困難であった症例に遭遇したため報告する。

【症例】

雑種犬、6歳、未避妊雌。体重は30kg(BCS:5)。

主訴
4年前より臀部における火傷から全身に皮膚炎が拡がった。他院にてセファロスポリン10mg/kg、チラージンによる治療を受けていた。

臨床像
体幹部を中心に眼周囲、口周囲、四肢などほぼ全身にわたり、脱毛、糜爛、痂疲、著しい落屑、強い痒みが認められた。肉球、耳介、全身の皮膚粘膜境界部には病変は認められなかった。


図1:臨床像(腹側)

図2:臨床像(背側)

図3:脱毛、糜爛、痂疲、落屑が認められる

一般血液検査所見
WBCの上昇(19300/μl)、TPの上昇(9.5g/dl)、軽度の貧血(RBC;474×104 /μl、Hb;11.3g/dl、HCT;33.2%)が認められた。T4,FT4は正常(T4;1.6μg/dl〈0.8-4.0〉、FT4;12.6pmol/L〈6-40〉)、抗核抗体は陰性であった。

治療
全身麻酔下において皮膚生検を実施し、皮膚病理検査は東京農工大学に依頼した。診断結果が出るまでの間はセファロスポリン25mg/kg、チラージン、チョコラA1万単位の投与、プロピレングリコールの外用塗布を行った。

皮膚病理検査(1回目)
病理組織所見は表皮基底部および毛包上皮部に沿って帯状にリンパ球様の細胞が浸潤し液状変性が認められ、病理組織学的診断は多型紅斑であった。一部の真皮表皮にはマクロファージと形質細胞を主体とした肉芽腫性の細胞浸潤が認められるとのコメントが加えられていた。

経過
内服と外用塗布により痒みと落屑は軽度の改善が認められたが、臨床像はほぼ改善していなかった。病理組織学的診断を受け、本例の臨床像と一致する点が乏しいと思われたため、オーナーに東京農工大学を受診することを薦めた。

皮膚病理検査(2回目)
東京農工大学において、1 回目の生検より68日後に再度皮膚生検が行われた。2回目の病理組織所見では境界部皮膚炎は認められず、毛胞周囲の炎症、皮脂腺の消失、毛包周囲性線維症が認められ、病理組織学的診断は皮脂腺炎であった。

【考察】

 本例は慢性的な皮脂腺炎を起こしておりそこに多型紅斑が併発したことにより、診断をより困難にさせたと考えられる。皮膚病の診断には皮膚の臨床像と病理組織学的所見を照らし合わせて診断することが重要であることを再確認した症例であった。臨床像と病理組織所見が一致しなければ、一次臨床の場でも躊躇することなく再度皮膚生検を行うことも重要と思われた。

すでに消失した皮脂腺は再生されないため、本例の皮膚は易感染性の状態にあり、生涯にわたるスキンケアが必要となる。ビタミンAの投与やサルファサリチル酸シャンプーなどによる鱗屑の除去、シャンプー・コンディショナーなどによる保湿、殺菌シャンプーや抗生物質の投与による二次感染のコントロールなどを行っていく必要があると思われる。


 

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