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動臨研カンファレンス 悪性組織球症が疑われた猫の1例 2005年1月 下里卓司 吉村良美 橋本志津 山村穂積(北川動物病院) 【はじめに】 悪性組織球症は組織球系の腫瘍は単核食細胞系から生じる腫瘍性疾患で、犬では良性の皮膚組織球腫から悪性度の高い悪性組織球症に至る様々な病変、病態が存在する。バーニーズマウンテンドッグに好発することは明らかで主として雄で、4歳から10歳の間のものとされている。ロットワイラーおよびゴールデンレトリバーに好発傾向が見られるが、猫における報告は少なく、診断に役立つのは腫瘍細胞による好中球、赤血球の貪食像で、ヘモジデリン沈着も付随してみられる。また、悪性組織球症は進行性、致死的疾患で、しばしば中枢を含む多数の臓器に病変を形成する。今回私たちは悪性組織球症の中でも非常に珍しく、進行具合の早いと思われる猫の悪性組織球症が疑われる症例に遭遇し治療する機会を得たのでその概要を報告する。 【症例】 症例はアメリカンショートヘアー、避妊済み、雌、体重は4.52kg、年齢は13歳7ヶ月、既往歴はなかった。 【主訴】 主訴として1ヶ月まえより右前肢の上腕の腫脹。体重の減少、1週間に前獣医により手術不適用とされたことのセカンド・オピニオンとして来院した。その為当院ではレントゲン検査、血液生化学検査、注射針による細胞診断を行った。 【レントゲン検査所見】 初診時におけるレントゲンでは、右前肢の肘を中心とした腫瘍は軟部組織のみで骨融解像などは見られなかった。また同時に撮影した胸部レントゲンにおいて異常は認められなかった 【細胞診診断結果】 個々の細胞には顕著な核に大小不同、大型核や複数核などの異型性が見られ、本病態が悪性度の高い腫瘍性疾患であることが示唆された。しかし未分化な為、確定的な診断は得られなかった。 【外科処置】 組織生検により確定診断を行う必要もあり、予後不良である可能性も十分考慮した上で、右前肢の断脚を行った。 【病理組織学所見】 断脚された右前肢の肘関節周囲に形成された腫瘤部では、骨周囲から筋肉内、皮下組織、真皮において、大小不同の著しい類円形を主体とした極めて多型な異型細胞の腫瘍性増殖が認められた。増殖する異型細胞は、大小不同の顕著な泡沫状から空胞状の弱好酸性の細胞質を有し、細胞質には大型の空胞形成や赤血球貪食が認められた。不整類円形主体の多型な異型核にも大小不同や核異型が見られ、多核や巨核の異型細胞も多数混在しており、組織球肉腫(悪性組織球症)が強く疑われた。 【経過】 その後の経過ですが、術後10日目にけるレントゲンにおいて右の後葉に転移を疑う所見を、術後22日目においては、右肩部腫瘤の再発が認められた。腫瘤は1週間で増大傾向にあったが、オーナーの希望から手術は行わず、治療も行っていない。 【まとめ】 本症例の最終的な確定診断には、免疫染色による各種酵素あるいは、フェリチンなどの腫瘍マーカー等の証明が不可欠ですが、入手可能な抗体が少ないのが現状です。また多数の化学療法の方式が試みられていますが、この疾患の進行を停止させるのに有用であることが証明されているものはない。このように悪性組織球腫症に関しては、学術的に整理された状況とは言い難く、猫に関しては非常に少ない。その上病理学的には診断にいたるプロセスがある程度得られていますが臨床的には併用化学療法によって治療するという試みからは、緩和な反応しかえられていない。そのため進行性の早いこのような腫瘍疾患に対しては、早期発見による拡大根治術しか有効な手段はないと思われた。
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