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動臨研カンファレンス

半導体レーザーによる経強膜毛様体光凝固術を行った
犬の緑内障15例 2004年7月

水野雅夫 重山純子 山村穂積(北川動物病院)

【はじめに】

 犬の緑内障は眼圧の上昇によって疼痛が生じ、さらに視神経が障害されて一時的あるいは永久に視覚を失う疾患であり、われわれ獣医師にとっても治療が非常に難しい眼科疾患の1つである。緑内障の治療は、視覚回復が望めるかいなかで大きく分かれ、視覚回復の可能性がある場合には積極的に内科あるいは外科治療によって眼圧を下げるように努める。眼圧を下げるために、注射や内服および点眼薬を組み合わせた内科治療が行われるが、十分な効果が得られない場合は外科治療が選択されることもある。緑内障に対する様々な外科手技が知られているが、視覚が回復する可能性のある場合には一般に隅角に対する術式が行われている。一方、視覚の回復が見込めない場合には毛様体部に対する術式や救済的な術式が行われている。最近では早期に半導体レーザー手術を選択することで視覚の維持に成功している施設もあり、視覚を有する初期の緑内障にも選択できる手術方法の1つとして考えられてきている。今回犬の緑内障15例に対して半導体レーザーによる毛様体光凝固術を行ったのでその概要を報告する。

【症例】

 1998年から現在までに緑内障と診断された犬35症例(45眼)のうち、犬種で分類するとシーズー9例、柴6例、雑種5例、A.C.S.2例、G.レトリバー2例、M.ダックス2例、他9例であった。年齢は2~15歳(平均約9歳)で雄13例、雌22例であった。原因で分けると原発性緑内障が26例34眼(初診時眼圧:平均47.12mmHg)、続発性緑内障が9例11眼(初診時眼圧:平均47.73mmHg)で、その原因は眼内炎2例、外傷後2例、水晶体脱臼2例、網膜剥離2例、角膜潰瘍1例であった。内科治療のみ行われたのは16例19眼 (初診時眼圧:平均40.65mmHg)で、点眼薬のみが7例、点眼と内服薬の併用が9例であった。外科治療が行われたのは19例26眼(初診時眼圧:平均52.62mmHg)でレーザー手術15例、GM眼内注入3例、水晶体摘出1例であった。視覚予後は35例中31例が最終的に失明した。

【術式】

 手術目的は毛様体を光破壊して眼房水産生を抑制し眼圧を低下させる。当院では半導体レーザー手術装置(オリンパスDIOMED25)のプローブ先端を加工して使用している。術式は全身麻酔または鎮静下で球結膜を露出し、角膜輪部から3〜4mm離れた部位の強膜上にプローブの先端を押し当て、毛様体に当たる方向(強膜に垂直)に照射する。このとき3時および9時の長後毛様体動脈を避け、2mm間隔で30〜40部位に照射する。プローブ先端のスポットサイズは600μmで、照射出力は1.5~2.0W、1.0〜2.0秒、30~45部位、総エネルギー量は60〜175Jである。また20〜50%の部位で破裂音(組織破壊による衝撃音)を発生させる。(破裂音が発生したならば出力を若干下げ、破裂音が発生しない最大出力で照射するほうが望ましいとする報告もある。)術後管理は、術直後の眼圧上昇予防のために必要に応じて前房穿刺を行う。また炎症管理のためにステロイドの結膜下注射、点眼および内服を行う。合併症として眼球萎縮、眼内出血、ブドウ膜炎、結膜充血・浮腫、角膜障害などが起こりえる。

【手術結果(15症例21眼)】

 犬種で分類すると、シーズー4例、雑種3例A.C.S.2例、柴、チワワ、G.レトリバー、チャウチャウ、M.ダックス、ダンディ・ディモント・テリア各1例であった。年齢は2〜14歳(平均約7.5歳)で雄7例、雌8例であった。全症例で患眼の威嚇反射は喪失していた。初診時眼圧(21眼)は28〜81 mmHg(平均51.90)で、手術回数が1回の症例は9例13眼で、術後眼圧4〜56 mmHg(平均9.72)であった。2回の症例は6例 8眼で、術後眼圧は9〜14 mmHg(平均11.27)であった。のべ手術回数は24回(1.0〜2.0mW、1.5〜2.0msec、30〜40部位)で総エネルギー量は60〜175J(平均116.8J)であり、77%の症例で正常眼圧近くまで下降した。原発性緑内障の10例14眼のうち、成功9例10眼、再度のレーザー(4ヶ月以内)3例4眼、再発2例2眼であった。合併症は眼内出血から眼球萎縮2例2眼、角膜潰瘍2例、白内障2例であった。続発性緑内障の5例6眼のうち、成功1例1眼で、合併症は眼内出血3例4眼、眼球萎縮1例1眼であった。

【考察】

 今回の緑内障の症例の大部分が視覚を失ったが、緑内障眼の視覚の評価が難しく、網膜電位検査の必要性も感じた。また、日頃より、特に好発犬種では飼主に啓蒙を行い、早期発見早期治療を行いたい。今回内科治療で眼圧が下がらず、視覚を失った緑内障眼に半導体レーザーによる治療を行ったところ、眼圧を低下させて疼痛などの症状を緩和することができた。術後に眼圧が安定せず複数回の治療を必要とした症例があったが、その原因としてレーザー出力や照射回数の不足、あるいは位置や方向がずれてレーザービームが毛様体からそれていた可能性が考えられた。重篤な合併症のうち、眼内出血から眼球萎縮に陥った原因として複数回のレーザー治療による過剰な組織破壊、続発性緑内障の炎症の悪化、血管の損傷、術後の炎症管理の不備などが考えられ、今後の検討課題となった。半導体レーザー治療の手技については、効果的な照射位置、方向、出力、時間、回数や術後管理方法などが十分確立されておらず、実際に手術を行ってみると強膜越しに毛様体の位置を予測し、重要血管を避けて照射し、安定した結果を得ることは容易ではないと感じた。さらにブドウ膜炎、眼球萎縮などの合併症のリスクも高いことから、国内で否定的な意見もある。レーザー治療を行うに当たって、症例を慎重に選び、飼主に十分インフォームした上で選択する必要があるが、今後症例を重ねて効果的で合併症が少ない方法が確立されれば、早期の緑内障に対して視覚を維持できる外科治療の1つとして期待できると思われる。今後は視覚を維持するための他の外科治療方法についても積極的に習得し、早期の発見と治療により、緑内障の治療成績が向上できるように努めたい。


 

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