» 医局員名簿
 ┣ 医局獣医師名簿
 ┗ 医局動物看護師名簿

» 研修室
 ┣ 学会誌
 ┣ 各学会・年次大会
 ┣ 小動物専門誌
 ┣ カンファレンス
 ┗ 個人・その他

» 院内日誌

» ペット栄養学教室

» パピークラブ

 

 

 

動臨研カンファレンス

低リン血症を伴った猫の糖尿病の1例 2004年6月

古川修治 岡田みどり 山村穂積(北川動物病院)

【はじめに】

 糖尿病性ケトアシドーシスに伴う低リン血症の原因として、利尿による排泄の増加、食欲低下や嘔吐などによる摂取障害、ならびに糖尿病の治療(例えばアシドーシスの補正やインシュリンの投与など)に伴うリンの細胞内への移動などが考えられている。 猫の低リン血症で最もよく認められる続発症は溶血性貧血で、他に運動失調や発作などが引き起こされる場合もある。しかしながら、低リン血症を示す症例の多くは症状を伴わず、リンの値が1.5~2mg/dl以下になってはじめて症状が発現するといわれている。 低リン血症に対しては、体液バランスを正常化することを目的に、まずは糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行う。しかし、治療後に低リン血症の発現が予測される場合や、既に低リン血症に伴う重篤な症状を示している場合は、リンを加えた輸液を行う。

【症例】和雑種猫、避妊済み雌、7歳

【小脳病理組織学的所見】2〜3日前からの食欲低下、嘔吐

【身体検査所見】虚脱、意識、体温の低下( 37.2 ℃ )、皮膚弾力性の低下

【初診時血液検査所見】Na : 140 meq/l, K : 1.8 meq/l, iP : 0.9 mg/dl, BS : 424 mg/dl

【初診時尿検査所見】Glu : >1.0 g/dl, Ket : 3+, Bil : 3+

【診断】糖尿病性ケトアシドーシス

【初期治療】塩化カリウム加生理食塩水、アンピシリン、ラニチジン

【初期治療の経過】体温( 38.8 ℃ )、BS : 208 mg/dl、電解質所見は改善せず

【第3病日の経過】血清の溶血、黄疸の進行、貧血を呈す、尿所見は改善せず

【第4病日の経過】死亡

【貧血の経過】下図

【考察】

 本症例は溶血性貧血を呈した後に死亡したため、その原因と考えられる低リン血症は予後を決定する重要な因子の一つであった。通常、リンの値が1.0 mg/dl以下の場合には重篤な続発症が引き起こされる可能性がある。そのことから、今回の0.9 mg/dlというリンの値を、低リン血症として重要視しなかったことは、反省すべき点であった。
 治療について、溶血性貧血が発現した原因は、輸液によるリンの希釈と考えられることから、初期治療の時点からリンを加えた輸液が必要だったと考えられる。糖尿病の治療については、リンの補充後に開始するべきであろう。
 また、このように急激な貧血を呈する場合、救命処置として輸血が考慮される。


 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED