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動臨研カンファレンス

内視鏡で診断した犬の十二指腸病変 2004年2月

阪口貴彦 小野田等 山村穂積(北川動物病院/東京都)

【はじめに】

嘔吐という症状からは、急性胃炎を代表として胃の疾患を想像することが多いため、十二指腸に原因のある疾患は見逃されやすい。そこで今回演者らは、内視鏡を用いて十二指腸病変が原因で嘔吐を呈したことがわかった犬3例において、バリウム造影検査所見、内視鏡検査所見、病理検査所見を見直すことで、若干の知見を得たので報告する。

【症例】

症例は、いずれも1ヶ月間にわたる間歇的嘔吐を主訴に来院し、また削痩、黒色便という慢性的な消化器疾患を伴った犬3例である。(表1)
以下、各症例のバリウム造影検査所見、内視鏡検査所見、病理検査所見を示す。

表1
症例 品種 年齢(歳) 性別 体重(kg) 主症状
1 シーズー 8 4.7 嘔吐、黒色便
2 ヨーキー 1.5 2.0 血様嘔吐
3 R・レトリバー 10 30 嘔吐、削痩

●症例1

バリウム造影検査所見:胃からのバリウム排出時間が若干早まっているものの、通過障害は認めなかった。十二指腸球部から下行部で粘膜面の不整が認められた。
内視鏡検査所見:十二指腸球部から下行部に粘膜が粗造で発赤し、容易に出血する病変を認めた。(図1)
病理検査所見:粘膜固有層に多数のリンパ球、形質細胞浸潤を認めた。
診断:リンパ球・形質細胞性腸炎
治療経過:メトロニダゾールの投与により、軽快し経過観察中である。

図1

●症例2

バリウム造影検査所見:胃からのバリウム排出時間が早まっていた。通過障害は認めなかったが十二指腸下行部で粘膜面の不整が認められた。
内視鏡検査所見:十二指腸下行部に糜爛、出血を伴う活動性の炎症所見を認めた。(図2)
病理検査所見:粘膜の障害が強いが好中球の浸潤は少なく、粘膜上皮細胞の核に封入体を認めた。
診断:ウイルス性腸炎
治療経過:パルボウイルス抗原検査、ジステンパー抗原検査ともに陰性であったので、ウイルスの特定はできなかったが、副腎皮質ホルモンの短期投与とメトロニダゾールの投与により軽快し、経過観察中である。

図2

●症例3

バリウム造影検査所見:十二指腸球部に潰瘍と思われるクレーター状の病変を認めた。通過障害はなく、胃からのバリウム排出時間は正常であった。また、脾臓の腫大を認めた。
内視鏡検査所見:十二指腸球部に直径約7mm大のクレーター状の潰瘍病変を認めた。(図3)
病理検査所見:好中球と極少数の好酸球を認め、上皮細胞の変性を認めるが異型性はなかった。
診断:十二指腸潰瘍
治療経過:血液検査にも著変認めなかったため、十二指腸潰瘍と脾臓の腫大の原因探索のための試験開腹を勧めたが、飼い主の承諾が得られず、内視鏡検査2週間後に死亡。剖検もできなかった。

図3

【考察】

診療現場において消化器疾患の症状としての嘔吐は、胃炎と捉える傾向にあり、内視鏡検査まで勧めないことが多い。しかし、今回の結果から、急性・慢性胃炎として治療している症例中にも、 急性・慢性十二指腸炎が、単独もしくは併発の形で数多く存在すると思われた。よって、バリウム造影検査だけでなく、全身麻酔リスクが高くなければ確定診断が可能となる内視鏡検査を、今回の症例よりもさらに早期に実施し、十二指腸炎を診断していくことで、胃炎との治療経過の違いが、認められる可能性が推察された。


 

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