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動臨研カンファレンス
脱毛を呈するフェレットの性ステロイドホルモンについて 2003年8月
小菅教仁 阪口貴彦 山村穂積(北川動物病院/東京都)
【はじめに】
フェレットにみられる脱毛の原因は大きく分けて生理的要因、皮膚疾患、内分泌疾患に分類される。その中でも内分泌疾患、特に副腎疾患(ACD:Adrenocortical diseases in Ferrets)が多く、雌においては卵巣遺残との鑑別が重要である。今回、本院に来院した脱毛を主訴とするフェレットと性ステロイドホルモンとの関連性を過去のデータをもとに比較検討したので報告する。
【材料と方法】
脱毛を主訴に2000年4月から2003年6月までに北川動物病院に来院し、性ステロイドホルモン測定を行ったフェレット18例を用いその傾向について検索した。測定した性ステロイドホルモンは17α-ヒドロキシプロゲステロン(17α-OHP)、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA-S)、アンドロステンジオン、エストラジオールの4項目であった。フェレットでは先天的に21−ヒドロキシラーゼの欠乏があり、ホルモン生成のなかで前述の4項目の高値を示すことから用いた。
【結果】
症例は全例去勢、不妊済みの雄 11例(61.1% )、雌7例(38.9%)であった。脱毛発現時の平均年齢は4.7才(3〜8才)であった。血清エストラジオール濃度は、雄が11例中5例、雌が7例中4例で高値を示した。血清DHEA−S濃度は、雄が11例中4例、雌が7例中1例で高値を示した。血清アンドロステンジオン濃度は、雄が11例中3例、雌が7例中1例で高値を示した。血清17α-OHP濃度は、雄が11例中3例、雌が7例中2例で高値を示した。
一方、雄では11例中10例(90.9%)がACDであり、雌では7例中5例(71.4%)がACDであった。脱毛を呈した雄において、 4つの性ステロイドホルモンのうち1つ以上が高値を示したものは11例中9例(81.8%)であり、雌では7例中5例(71.4%)であった。(表1、2)
表1 雄の性ホルモン濃度
| |
性ステロイドホルモン |
ACD |
| E |
D |
A |
H |
| 1 |
5.83 |
25.38 |
1.11 |
1.38 |
○ |
| 2 |
10未満 |
5未満 |
0.1未満 |
1.2 |
|
| 3 |
45.16 |
0.48 |
0.2 |
0.39 |
○ |
| 4 |
206.06 |
50未満 |
0.48 |
0.83 |
○ |
| 5 |
61.35 |
28.36 |
0.2 |
0.1 |
○ |
| 6 |
12.7 |
63 |
0.11 |
1.32 |
○ |
| 7 |
20.4〜34 |
1.1〜4.8 |
0 |
3.6 |
○ |
| 8 |
14 |
1.7 |
2.08 |
3.48 |
○ |
| 9 |
14.3 |
77 |
20.8 |
0.63 |
○ |
| 10 |
36.2 |
59 |
46 |
0.9 |
○ |
| 11 |
42.25 |
63.66 |
2.86 |
3.35 |
○ |
E = estradiol
D = dehydroepiandrosterone
H = 17α-hydroxyprogesterone
A = androstenedione
4つのうち1つ以上高値=9例(81.9%)
表2 雌の性ホルモン濃度
| |
性ステロイドホルモン |
ACD |
| E |
D |
A |
H |
| 1 |
37.3 |
50未満 |
0.1未満 |
1.63 |
○ |
| 2 |
38.44 |
0.31 |
0.1以下 |
0.1 |
|
| 3 |
217.82 |
25 |
0.3 |
0.7 |
○ |
| 4 |
635.27 |
4.4 |
0.1以下 |
1.5 |
○ |
| 5 |
321.36 |
50未満 |
0.1未満 |
0.25 |
|
| 6 |
33.9 |
50未満 |
0.1未満 |
3.02 |
○ |
| 7* |
223.83 |
73 |
1.47 |
11.9 |
|
*:顆粒膜-莢膜細胞腫
【まとめ】
本院での脱毛を主訴としたフェレットは内分泌疾患が多かった。その理由として、インターネットなどの多量の情報から飼主の知識や意識が向上したことや、ホルモン測定とともに外科的摘出により診断のついた件数が増えたことが考えられる。
雄、雌ともに4つの性ステロイドホルモンのうち1つ以上が高値を示した症例が多く、これは、エストロジェン、アンドロゲンはともに脱毛を起こす原因となることを裏付けている。
また、エストラジオール濃度のみの上昇、アンドロジェン系濃度のみの上昇があることから脱毛の仕方に差異があり、診断に役立つ可能性があると考えられる。
雄では4つの性ステロイドホルモンのうち1つ以上が高値ならば、ほぼACDということがいえる。一方雌では、例え4つの性ステロイドホルモンのうち1つ以上が高値であっても卵巣遺残との鑑別が重要で追加検査を行う必要がある。全て正常範囲であった場合の解釈は困難であり、性ステロイドホルモンの高値が脱毛症を引き起こすまでには時間差があるので、全て正常範囲であった場合でもACDを除外することは出来ない。その場合は、特徴的な脱毛様式や超音波検査などを併用して総合的に判断する必要がある。
今後は、脱毛様式や抜け方および部位などでホルモン(エストロジェン系かアンドロジェン系)の種類を推測出来る可能性があるので、カルテ記載を詳細にすることが重要である。そして、さらなる診断の信頼性を得るためにデータの蓄積が必要である。
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