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動臨研カンファレンス

自己免疫疾患が疑われたミニチュア・シュナウザーの1例 2003年6月

森本かおり 山岡新生 長澤昭範 三枝早苗 山村穂積(北川動物病院)
関口麻衣子 岩崎利郎(東京農工大学)

【要約】

6歳、避妊雌のミニチュア・シュナウザーが発熱、食欲不振の後、口腔内水疱、頚部に浮腫、鼠径部に膨疹・紅斑が認められた。皮膚の病理組織学的所見は境界部皮膚炎ではなく、人のスウィート病に類似していた。その後、IHA、ITP、ぶどう膜炎を起こし、これらの疾患は一連の自己免疫性疾患であると考えられた。

【症例】

6歳、避妊雌、ミニチュア・シュナウザー、6.7�。既往歴:子宮蓄膿症(5歳齢)。発熱、左前肢挙上、食欲低下を主訴に来院した。一般身体・一般血液検査検査では問題は認められなかった(WBC7300、PCV43%、PLT14.4×10、抗核抗体陰性)。乳酸ラクトリンゲルの点滴、アモキシシリン15mg/kgの静脈投与を行った。
第3病日より口腔内に水疱が、第5病日よりリンパ節の腫脹、頚部・鼠径部・耳介に膨疹・浮腫・紅斑が認められた。第6病日カルプロフェンの投与により体温が正常に戻り、食欲も元気も徐々に改善した。

【皮膚病理組織検査】

第11病日に全身麻酔下において皮膚生検を行った。頚部の浮腫がひどく、頚部・鼠径部に認められた膨疹は紫斑様の病変へと変化していた。耳介の紅斑は潰瘍化し、口腔内の水疱はびらん化した。臨床像からは自己免疫疾患が疑われたが、皮膚の病理組織学的検査では、その特徴的な表皮真皮の境界部皮膚炎が認められなかった。皮膚の組織所見は、真皮上層の水腫、血管周囲性細胞浸潤が認められ、人のスウィート病に類似していた。

【経過】

プレドニゾロン2mg/kgを投与し、皮疹は徐々に改善した。ところが、第19病日よりPCV、PLTの低下が認められ、直接クームス検査が陽性であった。IHAおよびITPと考え、プレドニゾロン3mg/kgへ増量したところ、PCV、PLTは徐々に改善した。
第58病日にプレドニゾロンを0.5mg/kgへ減量したところ、発熱・左前肢の挙上・頚部の浮腫が再燃した。プレドニゾロンを1mg/kgへ増量し改善が認められた。
顔面の潰瘍が改善した部位に、金色の毛が発毛した。1991年Whiteらによる18頭の若いミニチュア・シュナウザーに起こった特発性の黄金毛への毛色の変化についての報告がある。一方、2002年獣医臨床皮膚科において満田らは皮膚炎発症部位に限局的な黄金毛症が生じたミニチュア・シュナウザーの2例ついて報告している。本例も後者と同様に、皮膚炎が激しく潰瘍化した部位に黄金毛の発毛が認められ、報告と同じように数週間で常色毛の発毛が認められた。
第153病日にプレドニゾロンを0.5mg/kgへ減量したところ、発熱・左眼にぶどう膜炎を発症した。プレドニゾロンを1mg/kgへ増量し、発熱・ブドウ膜炎は改善した。
これまでに起きた症状と、体温、免疫抑制剤の投与量を表1に示した。プレドニンを漸減していき、日量0.5mg/kgにすると、発熱・左前肢挙上・頚部の浮腫・ぶどう膜炎が認められた。現在はプレドニゾロン0.5mg/kgにアザチオプリン1mg/kgを併用しているが発熱などの症状は認められていない。

表1 免疫抑制剤投与量と発熱・症状

【考察】

発熱、左前肢の関節痛、スウィート病様の皮膚炎、ぶどう膜炎、IHA、ITPは一連の自己免疫性疾患であると考えられる。しかし、IHA、ITP発症時には直接クームス検査が陽性であったものの、発熱は認められなかった。また、これらの症状よりSLEが疑われるが、関節炎は多発性ではなく、抗核抗体は陰性、皮膚病理組織学的所見もSLEと一致しなかった。
また、症状の一つの皮膚炎は、臨床像は自己免疫疾患を疑わせるものであったが、その組織は境界部皮膚炎ではなく、犬で報告のないスウィート病に類似していた。スウィート病とは人においてあまり多くない皮膚疾患で、中年の女子に多く、発熱や上部気道感染の後に顔面や四肢に滲出性の紅斑が認められる。その病理組織は真皮上層の水腫、好中球の血管周囲性細胞浸潤が特徴的である。スウィート病は何らかの炎症のあとに発症してくる皮膚炎であり、本症例はSLEなどの基礎疾患があり、皮膚炎がスウィート病に類似していた可能性は考えられた。
確定診断をするため、定期的な抗核抗体の測定や再燃時に関節液の検査・直接蛍光抗体検査を行う予定である。一方、肝酵素の上昇・肥満などが認められるため、プレドニゾロンの減量が必要である。現在はプレドニゾロンとアザチオプリンを併用しているが、肝酵素の推移によってはシクロスポリンなどの他の免疫抑制剤への変更も検討している。


 

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