» 医局員名簿
 ┣ 医局獣医師名簿
 ┗ 医局動物看護師名簿

» 研修室
 ┣ 学会誌
 ┣ 各学会・年次大会
 ┣ 小動物専門誌
 ┣ カンファレンス
 ┗ 個人・その他

» 院内日誌

» ペット栄養学教室

» パピークラブ

 

 

 

動臨研カンファレンス

胃平滑筋肉腫と肝細胞癌を併発した犬の1例 2003年4月

徳留史子 橋本志津 山村穂積(北川動物病院・東京都)

【はじめに】

犬における胃の新生物の発生は腫瘍全体の1%以下であり、平滑筋肉腫はそのうち5%と稀で、肝細胞癌の発生は全腫瘍の1%以下である。 
また、ヒトで複数の原発性腫瘍(multiple primary malignant neoplasmas MPMN)は同一の器官、同系統の器官で発生する傾向があり、加齢とともに発現率が高くなるとの報告がある。
今回、いずれも発生の少ない胃平滑筋肉腫と肝細胞癌の二種類の消化器原発悪性腫瘍を併発した犬の症例に遭遇したので報告する。

【症例】

中型雑種犬、雌(不妊手術済)15歳齢
間歇的な出血性の嘔吐、黒色便、食欲不振を主訴に来院

【初診時の臨床所見】

体重15キロ(やや削痩)、血液検査ではヘマトクリット値の低値(20.4%)を示し、再生性貧血がみられ、血液生化学検査では血清ALT、ALPの上昇、TPおよびアルブミンの低下を認めた。

【経過】

出血性嘔吐や黒色便の排泄から消化管出血を強く疑い、レントゲン検査所見から肝臓及び胃の腫瘤の存在を考慮したが、症例が高齢であることを理由に外科処置を希望しないとのオーナーの意思により、止血、肝庇護剤の投与などを行った。
その後、症状として有形黒色便は残ったが、貧血は改善し、重度の肝不全の所見は見られないまま肝酵素値は高値を維持した。
しかし、初診時から約一年後に全身状態が悪化し、再度バリウム造影検査を行った。(Fig-1〜2) また、超音波画像診断では左側後葉に5cm大の低エコー高エコー混合性の腫瘤を認めた。
結果、胃及び肝臓の腫瘤の存在が強く示唆され、現状では臨床症状の改善は望めないものと判断し、試験的開腹処置を実施した。(Fig-3〜4)
術後、臨床症状の軽減はみられず、11日目死亡した。


Fig-1

Fig-2

(Fig-1,2)バリウム造影検査:肝腫大及び胃底部のバリウム充填欠損像がみられる。


Fig-3

Fig-4

(Fig-3)胃の小湾部に存在したポリープ状の腫瘤:割面は白色で、割面中心部には壊死が見られる。 
(Fig-4)肝臓の外側左葉に見られた腫瘤:褐色で軟らかい構造で、大きさは長軸が約10cm厚み約2cm、大きく孤立性の腫瘤であった。

【病理診断所見】

胃平滑筋肉腫:束状に交錯する好酸性細胞質を持つ紡錘形の細胞が増殖しており、大小不同や核分裂像が見られ、所々で壊死が起きていた。
高分化型の肝細胞癌:正常と類似した肝細胞がさく状構造を形成して増殖、軽度の大小不同と核異型が見られた。

【考察】

本症例は臨床症状、各種検査所見などから、診断の一年半前の初診時ですでに胃及び肝臓の腫瘍は存在しており、また、消化管出血の症状が主体であったこと、重度の肝不全の所見が見られなかったことなどから肝細胞癌よりも胃の平滑筋肉腫が臨床症状の悪化に主に関わっていたと考えられた。
いずれも発生の少ない胃の平滑筋肉腫と肝細胞癌の二つの消化器原発悪性腫瘍の併発という老齢犬の同系統の器官での複数の腫瘍発生の症例であり、高齢動物の担癌患者では複数の腫瘍の併発、特に同系統の器官の腫瘍の発生を念頭に置く必要があると思われた。


 

東京都板橋区にある犬と猫を中心に診療・治療している動物病院です。質の高い動物医療を提供できるように努めています。(C) 株式会社 ホズミ ALL RIGHTS RESERVED