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動臨研カンファレンス

猫の胸腺腫の1例 2003年2月

下里卓司 長澤昭範 古川修治 山村穂積(北川動物病院・東京都)

【はじめに】

胸腺腫は上皮性胸腺細胞の腫瘍で、牛、山羊、綿羊、犬、猫などで報告があるが、犬猫の回顧的報告は少ない。ヒトでは免疫疾患、筋無力症と関係することがあるが、犬猫では明確な関連は報、告されていない。また胸腺腫は結合組織の被膜に覆われ比較的ゆっくりと増殖し転移も比較的起こりにくいとされている。

【症例】

症例は、雑種猫。11歳。雌。嘔吐後の失神、虚脱で来院。来院時身体検査で若干の虚脱と低体温が見られた為、軽度のショック状態と判断した。聴診により肺音の粗造、心音の聴取が困難なことから、胸腔疾患を疑った。

【臨床検査所見】

血液生化学:初診時の血液検査においてはLDH値とCK値の高値が見られたが、腎機能等に異常は見られなかった。
レントゲン:ラテラル像、VD像ともに前胸部にマス様が確認できた。
腫瘍:外科により切除された5cm×4cm×2.5cmの肉眼的所見は結合組織の皮膜に覆われ内部には嚢胞が多数存在した。

【病理学所見】

低倍においては右の大部分が不規則に拡張した腔を形成する腫瘍組織が占めていた。高倍において腫瘍細胞は楕円形の核を持つ上皮細胞で大小の腔を形成しながら増殖しており、少数のリンパ球が混在していた。以上の所見より本腫瘤は胸腺腫と診断された。

【術後経過】

術後経過として、術後3日目に、腎機能で関連しない一過性の処置に反応した高K血症が認められた。ラシックス、カルチコールの投与及び、生理的食塩水の輸液療法により改善した。同時ひ後肢に浮腫が見つかりました。その為、心臓に対する検査を行った結果、三尖弁における逆流、右心不全が見つかりました。投薬として二トロールとペルサンチンを開始した。また長期にわたり胸水が溜まったため、胸水の検査を再度行いました。無色で乳ビなどが見られず感染もないことより、術後の無菌性縦隔炎と判断した。胸水の除去、心臓の治療、栄養管理を行いましたが、術後42日目に腎不全を併発し死亡した。

【まとめ】

高血症についてリンパ腫や白血病における化学療法や放射線療法、外科手術の後、急性腫瘍溶解症候群として高K血症の報告はありますが、胸腺腫による高K血症の報告は、見つけることが出来ませんでした。今回の高K血症のついては術後の縦隔炎や術中の組織の広範な破壊によりカリウムが細胞外への移動が行われたため術前のCK値の高さから失神虚脱による筋肉などの損傷などが考えられると思われた。


 

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