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動臨研カンファレンス 猫の原発性副腎皮質機能低下症の1例 2003年1月 長澤昭範 西野亜紀 岡田みどり 山岡新生 山村穂積(北川動物病院・東京都) 【はじめに】 原発性副腎皮質機能低下症は、猫の内分泌疾患の中では稀な疾患である。臨床検査所見として血清電解質異常は一般的であるが、猫においては犬と比較してカリウムの重度上昇が表れにくいとの報告もある。今回当院において低ナトリウム、クロール血症が持続し、他の臨床検査が副腎皮質機能低下症所に一致した所見が得られた猫は、ACTH刺激試験および内因性ACTH濃度の測定結果から原発性の副腎皮質機能低下症と診断し、治療を行ったのでその概要を報告する。 症例 雑種猫、10才齢、避妊済み、予防歴なし、既往歴なし 主訴 3日前より飛節をつけたまま動かず、食欲廃絶とのことで来院。 一般身体検査所見 体重2.64kg、痩削、体温38.1℃、脱水(10%)、股脈触知不可 臨床検査所見 血液学的検査所見: 明らかな異常は認めなかった(表1)。
血液生化学検査所見:血清総蛋白とくにアルブミンの低下、AST、LDH、CK活性の上昇。BUNの上昇、低ナトリウム・クロール血症が認められた(表2)。
尿検査所見:pH7.0、比重1.025その他異常所見は認めなかった。 追加検査 血液生化学検査結果での筋に関連した酵素活性の異常より、筋障害を伴う疾患を考慮し、以下の追加検査を実施した。 経過:第1〜5病日 入院にて5日間支持的にラクトリンゲルでの点滴を行い元気、食欲にわずかに改善がみられた。しかし、初診時平熱だった体温は、入院中35.5〜37.5度と低体温を呈した。第5病日に血液の再検査を行った(表3)。筋肉に関連した酵素活性はほぼ正常値に戻り、高窒素血症も改善されたが、低蛋白、低ナトリウム・クロール血症には、変化がなかった。
経過:第6病日〜 週2回の皮下補液を実施し、食欲不振時に対しては強制給餌およびジアゼパムの投与を行い経過を観察した。体重は明らかな減少がみられた。 経過:第48病日 食欲廃絶、強制給餌に対しても全て嘔吐。低体温で股脈は触知不可。非再生性の貧血、低血糖がみられ、血清電解質は低ナトリウム・クロール血症が認められた。 症例の再検討 入院中の低体温、低アルブミン血症、慢性的な循環血液量の不足、持続する低ナトリウム・クロール血症、非再生性の貧血、低血糖、これらの所見から副腎皮質機能低下症を強く疑った。 ACTH刺激試験3)および血漿ACTH濃度の測定 合成ACTH投与前の血漿コルチゾール値は基準値に比べ低値を示し。合成ACTHの投与に対しても血漿コルチゾール値の反応は認められなかった(表4)。血漿ACTH濃度は基準値と比較してはるかに高い値を示した(表5)。
診断 原発性副腎皮質機能低下症 治療 グルココルチコイドとしてプレドニゾロン2mg/kgをsidから開始し、ミネラルコルチコイドとして酢酸フルドロコルチゾンを0.025mg/kgをsidで投与した。 経過:第70病日〜 診断後20日目の臨床検査所見は、体温38.1℃、PCV37%、TP8.0g/dl、BS118mg/dl、血清電解質(mEq/l)Na145、K3.8、Cl112と改善がみられ元気、食欲ともに安定した。状態の安定をみてグルココルチコイドの漸減を試みたが0.5mg/kgの時点で、食欲の減退および体重の減少がみられたため投与量を1mg/kgに戻し現在経過を観察中。 【考察】 初期の臨床検査から早期診断はできなかった。その理由としてカリウムの重度上昇が見られなかったことおよび低体温に注目すべきであったことが挙げられる。血清電解質に関しては猫でも原発性の本疾患では古典的な電解質異常を示す1)2)とされるが、カリウムは犬と比較して重度上昇は一般的でない1)との報告もある。猫の本疾患10症例の報告では血清カリウム値は5.4~7.6であり、ナトリウム・カリウム比は17.9〜23.7と24以下であった2)。本症例のカリウム値は3.9から最高でも4.7であり、ナトリウム・カリウム比は34〜27.6であった。このことから特に猫では臨床症状が本疾を疑患える所見であれば、血清電解質異常の程度にかかわらず鑑別する必要があると思われた。 (参考文献)
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